鹿島アントラーズやセレッソ大阪でプレーした石神直哉氏(35)が、20年シーズンをもって現役を引退した。ラストイヤーは関西リーグ1部のFCティアモ枚方に所属し、小川佳純監督(36)のもとJFL昇格を果たした。

引退を決めたのは、昨年10月3日の関西1部最終節、おこしやす京都AC戦。引き分け以上で優勝が決まる試合で、石神氏は0-2で迎えた後半16分にCKからヘディングゴールを決めた。後半ロスタイムにはMFチョ・ヨンチョルの劇的な同点弾が生まれて、枚方は優勝と同時に、JFL昇格を懸けた「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(CL)」への出場権を手にしたのだった。

電話取材に応じた石神氏は「最高の引退です。契約は来年もあったけど、自分の中で満足した部分があった。『クビ』と言われるのでなく、やりきって辞めたいと思っていた」と、すがすがしい思いを口にした。

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現役生活と並行して、石神氏は19年5月からサッカー情報サイト「REIBOLA(レイボーラ)」の“編集長”を務めていた。18年夏ごろに知人から「サッカーメディアを立ち上げたい」と誘われ、サイト名の考案からコンテンツの決定に至るまで、すべての過程に携わったという。今でこそJリーガーのコラムや対談など充実したサイトになったが、最初は0からのスタートだった。交流のあるライターに教わりながら取材申請書を作成したり、ビジネス本を見ながらメールを打ったりと、二足のわらじで奮闘してきた。今ではほとんどのクラブの広報とコミュニケーションがとれているという。

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中でも力を入れたコンテンツがある。「レイボーラ・アイ」という、自身のプロフィルを登録できるコーナーだ。身長体重や経歴、アピールポイントといった基本はもちろん、自身のプレー動画も登録することができる。石神氏は「サッカーをしている中で『もったいないな』という選手をたくさん見てきた。原石みたいな少年はたくさんいる。でも、高校や大学はスカウトにお金をかけられない。本人は気がついていないけれど、はたから見たらポテンシャルがある子は、日本サッカー界にとっての取りこぼしになってしまう」と、強い思いを語る。

運用から1年半がたち、登録していた選手からJリーガーも誕生した。今季北陸大からロアッソ熊本へ加入する、MF東出壮太だ。もちろん、「レイボーラ・アイ」がなくてもプロ入りは実現していたかもしれない。それでも石神氏は「登録していたのは、少なからず将来に不安を抱いていた選手たちだと思う。そこから夢をかなえて、Jリーガーになれた。少しでも力になれていたらうれしい」と話す。

「レイボーラ・アイ」はG大阪や名古屋など複数のJ1クラブが閲覧しており、なでしこリーグや大学、Jクラブのユースチームもサイトを利用しているため、女子選手や中学生以下の登録者も多い。コロナ禍で学生たちがアピールの場を失った昨年は、特に存在意義を実感したという。「才能を見つけてもらうこと」の難しさを知る元プロならではの視点で、石神氏は悩める学生たちに手を差し伸べている。【杉山理紗】