マインツへ移籍する東京の日本代表FW武藤嘉紀(22)が、Jリーグ史上20年ぶりの快挙を置き土産にした。アウェー松本戦で、自ら演出したPKを決めて今季10点目をマークした。プロデビューから2年連続での2桁ゴールは、94、95年に達成したFW城彰二以来2人目。このゴールが決勝点となり、東京は3位に浮上した。

 プロ3度目のPKは、自然と落ち着き払っていた。武藤は向かい合う相手GKの動きをじっくりと見ながら、ゴール左隅へ蹴り込んだ。「これが3回目で、だいぶ落ち着いてやれた」。前半ロスタイムに自ら相手DFのハンドを誘発して得たPK。序盤から、ねちっこい芝生に旗が激しく揺れる風。しかも前半は風下に苦しめられた。しかしPKとなれば、敵はGKのみ。ゴール裏で挑発するスタンドは視界に入っていなかった。大記録さえも頭になかった。

 事実上の決勝点となったゴールは今季10点目。シーズン前にファンの前で宣言した数字だったが「完全に頭に入っていなかった。これで10点…。ファンの方に言った10点を取れてよかった」。プロデビューした昨季の13点に続き2年連続2桁ゴールは、J1史上2人目。しかも第1ステージで達成する異例のハイペース。得点ランクの首位タイに立った。2年目のジンクスなんて、武藤には関係なかった。

 マインツ移籍が決まり、在籍1年半で背番号14に強烈な印象を残し、あと2試合で慣れ親しんだユニホームを脱ぐ。東京のスクールに通った小学校時代、あこがれた後ろ姿があった。当時14番を背負った佐藤由紀彦氏。昨季限りで現役を引退し、今季から東京普及部のコーチを務めている。練習場で顔を合わすと自然と背筋を伸ばして会話する。4日の練習後にも「頑張れよ」と声を掛けられた。かつて食い入るように見た後ろ姿を今、身をもって後輩たちに見せていることに意味がある。

 武藤を含めて東京下部組織出身者が7人先発した。これはクラブ史上最多記録。「7人も出て素晴らしい形で勝てた。支えてくれた人たちも喜んでくれると思う」。個人でもチームでも記録を打ち立て、今日8日から代表合流。初めてのW杯出場権を懸けた戦いに向かう。【栗田成芳】

 ▼東京FW武藤が得点ランクトップタイに並ぶ10得点目。新人だった昨季の13ゴールに続き、2年連続2桁得点となった。ルーキーイヤーから2年連続10ゴール以上は94、95年のFW城(市原=現千葉)以来、20年ぶり2人目。

 現行の年間試合数は34試合だが、城が在籍していたときのJリーグは94年が44試合、95年が52試合と年間の試合数が多かった上に延長戦もあった。武藤と城の得点を、1試合90分平均に換算して比較すると、城は2シーズンともに0・3点台だったのに対して、武藤は1年目が0・47点、2年目の今季は0・69点と城の倍のペースでゴールを量産している。

 今季は04年以来の2ステージ制で争っているが、日本選手が第1ステージの得点ランク1位となれば、最終的に得点王に輝いた02年の高原(磐田)以来となる。