ベガルタ仙台は清水エスパルスを2-1で下し今季初のホーム戦3連勝を飾り、暫定6位に浮上した。

この日、ロシア1部のCSKAモスクワへ移籍するFW西村拓真(21)がスタンドで見守る中、DF大岩一貴(29)が餞別(せんべつ)のゴールを決めて先制。前半24分、MF野津田岳人(24)の放ったCKをニアサイドでとらえ、今季2得点目を右足で流し込んだ。1-1で迎えた後半ロスタイムにはFW石原直樹(34)が執念のゴールを奪って勝ち越し。西村を白星で送り出した。

歓喜の祝福の輪が解けると、大岩はスタンドの西村に向かい両手でガッツポーズを作りアピールした。それを見た西村は白い歯をのぞかせ、照れながら笑顔で応えた。本来なら同じピッチに立っていたはずの男は、思い出が詰まった聖地を見下ろし、世界挑戦への決意をあらためて胸に刻み込んだ。

仙台に加入した当初は紅白戦にすら出場できなかった。主戦場はJ3のU-22選抜。それでも、J1でプレーすることにこだわり、J2へのレンタル移籍を打診されても断り、貪欲に技を磨き続けてきた。今季、その努力が花開き、聖地ユアスタでは公式戦10ゴールを挙げるなど、抜群の決定力を発揮した。6月の天皇杯群馬戦では自身初となるハットトリックを決め、実力をアピールして海外移籍への足場を築いてきた。

試合後には壮行セレモニーが行われた。仙台ラストステージ。西村は静かな口調に、決意を込めた。

「この時期に移籍を尊重してくれたベガルタの皆様に、感謝します。3年半でしたが、仙台の街、選手、スタッフが大好きになりました。向こうで苦しむことも多いと思いますが、乗り越える覚悟はある。日の丸をつけて日本に帰ってこれるように頑張ります」

4年後、ワールドカップの舞台での再会を誓った。【下田雄一】