日本のレジェンドが、また1つ記録と歴史を刻んだ。横浜FCのFWカズ(三浦知良、53)が、最終節の「横浜ダービー」の後半45分から途中出場。自身が持つJ1最年長出場記録を53歳9カ月23日に更新した。激動となったコロナ禍のシーズン。今季13年ぶりにJ1の舞台に戻ってきたチームの中において、その背中、存在で後輩たちを引っ張り、自身も走り続けた。

   ◇   ◇   ◇

試合開始前のニッパツには、曇り空が漂っていた。キックオフ後も、どことなく暗い。後半30分を過ぎたころ。どんより雲の隙間から、グラウンドに光が差し込んだ。何かの知らせのように。3-1と2点リードした同45分。カズがピッチに立った。太陽のような男が、会場をさらに照らした。53歳9カ月23日。自身が持つJ1最年長出場記録を更新した。

衰えを知らない日本のレジェンド。前線でボールの起点になるだけでなく、自陣に戻って献身的に守備もこなした。それでも、少ない出場時間ではチャンスは巡って来ず。94年にジーコ(鹿島)が、マークした41歳3カ月12日のJ1最年長得点記録の更新とはならなかった。

試合後のオンライン取材に対応したキングに、ホッとした表情はなかった。コロナ禍で特別な1年となった今季。画面越しの表情にはシーズンを終えた安堵(あんど)感ではなく、飢餓感があった。

カズ みんなが期待していたゴールを挙げたかったし、そういう思いで毎日いたし、過ごしていたし、トレーニングをしていた。3年間ゴールがない。実力不足だし、現状の自分に満足していない。

先発したFW斉藤光は19歳。世界を見ても、10代の選手が多く活躍の場を広げるサッカー界。時代と逆行するように、日本の顔として歩み続ける53歳は、欲している。

カズ もっと試合に出たいと毎日、思っている。これは努力しかない。自分の伸びしろは分からない。ただ、挑戦させてもらえるなら、挑戦したい。

その姿に後輩たちは感化され、ファンは心酔する。

視線の先に21年シーズンがある。毎年恒例であるオフのグアム自主トレは、コロナウイルスの状況を鑑みて、国内で行う予定。自身、そして日本中が期待するゴール-。54歳シーズンで、歴史を打ち立てる。【栗田尚樹】