まだまだボールはともだちだ-。ベガルタ仙台などJリーグでプレーしてきた元日本代表のMF関口訓充(36)は、人気漫画「キャプテン翼」の原作者、高橋陽一氏(61)が代表を務める関東1部の南葛SCに今季加入した。「40歳まで現役」を宣言するベテランは、JFL、Jリーグ昇格に照準。開幕戦となる2日のアウェー東邦チタニウム戦からプロ19年目のシーズンが始まる。【取材・構成=山田愛斗】
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「キャプテン翼」の世界に飛び込んだ? 関口は作中で主人公の大空翼や岬太郎、若林源三ら人気キャラクターが、プレーしていたチームと同名の南葛SCで再出発した。昨季主戦場のJ1から数えて5部リーグ相当だが「『キャプテン翼』はサッカーをやっている世界中の子どもが知っている漫画。そのクラブに携われてすごく幸せです」。今季から元日本代表のMF稲本潤一(42)、MF今野泰幸(39)、DF伊野波雅彦(36)が入団。「本家」同様に豪華メンバーがそろい、可能性は無限大だ。
「南葛SCの名前は『キャプテン翼』の影響で、聞いたことがある人が多いと思います。JFLに昇格してJ3だったり、今はまだ先ですけど、ACL(アジア・チャンピオンズリーグ)とか、いずれ世界に出て、上に行けば行くほど、他のクラブでは集まらないようなスポンサーも集まるでしょうし、非常に夢があって楽しみなクラブだと自分はひかれました」
もちろん、少年時代は世界で一番有名なサッカー漫画に夢中になった1人だ。「やっぱり翼君と岬君のゴールデンコンビですよね」と王道を挙げつつ、「石崎君みたいに特別な取りえがなくても必ず出てくる選手もいれば、三杉君の心臓病とか1人1人のキャラ設定も濃くて面白いです」。その世界観に引き込まれた。
J1でクラブ最高順位の2位、J2降格など酸いも甘いも経験し、計13年在籍した仙台を昨年12月に契約満了で退団。今年1月に東京都葛飾区が拠点の南葛SC加入が発表されたが、決断前には仙台の地に家族を残してプレーする葛藤もあった。
「プロとは何か?」を自問自答する日々が続いた。一時は「引退」の2文字も頭をよぎったという。東京では単身で暮らす家賃、光熱費、食事代などが発生する。「『金銭面で家族に迷惑をかけてまでサッカーをするのがプロか?』と言われたら、『ある程度はお金を稼がないとプロじゃない』と引退を考えていました」。仙台で仕事をする道も検討したが、南葛SCからの提示額が「自分が予想していたよりは良かったです」。その上で「もう1回サッカーに対する気持ちが燃え上がり、『やってやろう』という気持ちになりました」と迷いは消えた。
「選手個別パートナー」というクラブ独自施策も魅力的だった。練習着に法人、個人の「スポンサー」をつけられる制度で、選手が金額とパートナー数を自由に決められ、パートナー料から経費(ウエア代)を除いた金額が収入になる仕組みだ。「自分を支援してくれる方が多く集まってくれました。その思いも背負ってピッチで戦いたいです」。感謝の気持ちを忘れずにプレーする。
サッカーを続ける理由は他にもある。20年限りで現役生活に幕を下ろした、元日本代表でJ1川崎Fのレジェンド、中村憲剛氏(41)との会話が今でも心に残っている。仙台在籍時の同年10月10日、等々力陸上競技場での川崎F戦。入場前に中村氏から「何歳になった?」と、ふと声をかけられた。関口が「もう34歳で35歳の年です」と答えると、「あと5年はやれよ」と激励されたという。それから3週間後の同10月31日に40歳を迎えた中村氏は、翌日の11月1日に引退を発表した。
「あの会話の意味は『憲剛さんが引退する年齢のことを言っていたんだな』と、自分の中では感極まるものがありましたし『頑張ろう』という気持ちになりましたね。とりあえず40歳まではやりたいです」
2月からチームに合流した。葛飾区内にある練習拠点は3カ所で、すべて人工芝。Jクラブのようにクラブハウスがないため、スパイクは常に数足を車に積んだ状態で、練習着も持参する。さらに新居が決まるまでの約1カ月半は、多摩市内の実家から片道2時間かけて練習へ。実家暮らしは午前5時過ぎの始発で通学していた帝京(東京)時代以来18年ぶりだった。
環境面は決して恵まれていないが、年上の稲本、今野、同い年の伊野波らも在籍しており「このチームには本当に経験のある選手がいるので、練習中からも刺激を受けることが多いです」。例外はあるものの、ひとつ上のカテゴリーであるJFL入会は関東1部で優勝し、その先の全国地域サッカーチャンピオンズリーグで2位以内に入れば自動昇格できる。新たな仲間とともに上を目指す。
「サッカーをやっている以上は目指すのはJ1だと思います。僕だけではなくて、イナさん(稲本)、今ちゃん(今野)、途中から入ったイノ(伊野波)も、今は関東1部にいますが『またJに』という気持ちがあると思います。この1年でJFLに上がり、また次の年にJ3に上がれるように、1日1日を大切に取り組み、子どもたちに夢を持ってもらえるようなプレーをしたいと思います」
エネルギッシュなプレーで南葛SCの翼となり、はるか上のステージまでチームを羽ばたかせる。
◆関口訓充(せきぐち・くにみつ)1985年(昭60)12月26日生まれ、東京都多摩市出身。永山FC、FC多摩Jrユース、帝京を経て04年に仙台入り。04~12年、18~21年が仙台、13、14年は浦和、15~17年はC大阪でプレー。南葛SCに今季加入。J1通算225試合12得点、J2通算247試合20得点、Jリーグカップ戦通算39試合2得点、天皇杯通算31試合1得点、日本代表で3試合無得点。ニックネームはクニ。背番号「7」。171センチ、66キロ。



