昨年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会組織委理事で、4月まで静岡県副知事を務めた吉林章仁氏(66)がこのほど、県ラグビー協会の相談役に就任した。県庁で日刊スポーツの取材に応じ、袋井・エコパスタジアムで行われたW杯4試合や今後について語った。

エコパでは9月28日の日本-アイルランド戦など、10月11日までに4試合が組まれた。海外チーム同士が対戦する3試合では、約4万人収容の観客席が埋まらないのでは、という懸念があった。「エコパを観客で満員にするのが使命だった。日本戦以外は、平日夕方か夜の試合。お客さんが来てくれるか不安だった」と吉林氏。県内の小中高生計2万5000人を3試合に招待することを決めた。

心配無用だった。日本が優勝候補アイルランドを破り、「静岡ショック」と世界を驚かせる番狂わせで、注目度が一気に高まった。その後の3試合の入場券も完売。4万人前後を安定して集めた。吉林氏は「日本代表を誇りに思います。子どもたちが旗を振って応援してくれたのが、印象に残った」と振り返った。

今年1月のトップリーグ・ヤマハ発動機-神戸製鋼戦(ヤマハ)を観戦。W杯効果でファンの増加やラグビー熱の高まりを感じた。今後、県や地域と一緒になって競技人口拡大を目指す。「規律やワンチームというラグビーの精神を、子どもたちの教育にも結びつけたい」。昨年発行の教本「はじめてのラグビー」を小中学校で継続使用する。「経験者などOBにも普及を応援してもらう仕組みを考える」と意欲を示した。【倉橋徹也】

◆吉林章仁(よしばやし・あきひと)1954年(昭29)5月24日、天竜市(現浜松市天竜区)生まれ。浜松北高-東北大法学部。中学で軟式野球、高校で山岳部、大学で準硬式野球を経験。77年に県へ入庁。総務部企画監や産業部理事兼県民部理事、経済産業部長、知事戦略監などを歴任し、16年から副知事。現在は特別補佐官(総合教育担当)。趣味はゴルフとスポーツ観戦。