8月3日に閉幕した水泳の世界選手権(シンガポール)で、競泳日本代表は4個のメダルを獲得した。

低迷した24年パリ五輪の1個から浮上の兆しを見せ、女子400メートル個人メドレー銀メダルの成田実生(みお、ルネサンス金町)と男子200メートル自由形銅メダルの村佐達也(イトマン東京)の18歳コンビが躍動。男子400メートル個人メドレーで五輪に続く銀メダルをつかんだ松下知之(東洋大)は20歳と、若き才能が輝いた。

現地で見守った16年リオデジャネイロ五輪金メダリストの萩野公介氏(30)が、現在地を解説した。【聞き手=松本航】

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15歳で世界ジュニア選手権3冠の成田選手は当時、東京五輪個人メドレー2冠の大橋悠依さんに続くスター誕生と期待されました。そこから福岡開催の23年世界選手権で決勝8位。昨夏パリ五輪6位の悔しさをへて、表彰台に立ちました。

これまではアメンボのように、水しぶきの上がらない泳ぎが特長でした。成長に合わせてウエートトレーニングに取り組み、今季はしっかりと水をかく泳ぎになっています。キックの推進力も上がりました。決勝前半の200メートルで7番手でしたが、後半でスイッチを入れられた。過去の経験を踏まえ、本人が言うように「なりたい自分になる」という思いがにじみました。

村佐選手はうれしい想定外でした。頭で考え、泳ぎに反映するのが、ものすごく上手な選手。“水泳オタク”で自分だけでなく、他の選手の過去のタイムや特徴も頭に入っています。世界のメダリストはレース中にキックのタイミングなどを変えて、ギアを上げ下げします。その才能がある。今後は200メートルを軸に考えると、100メートルでスピードを上げる、400メートルで持久力を上げる方法があります。彼は両方の選択肢を持て、成長の余地があります。

自己ベスト更新の20歳、松下選手も順調に階段を上がっています。400メートル個人メドレーは予選(4分10秒39)と決勝(4分8秒32)のタイムを足し、2で割った数字を地力とみます。それが今回は4分9秒台。国内は予選で力を抑え、決勝で大幅な自己記録更新も狙えますが、世界では通用しません。その点で予選の4分10秒39は、3年後のロサンゼルス五輪でも決勝進出が堅い。これぐらいの予選の泳ぎから、決勝の記録を伸ばしていく作業です。

男子200メートル平泳ぎでの渡辺一平選手の6年ぶり表彰台を含め、メダル4個でチームづくりの方向性は間違っていないことが分かりました。ただ、今のままで米国のような強豪にはなれません。金メダルがないのも事実。現状で満足せず、今後もどのように進んでいくのかを、選手、指導陣、水泳界全体で考えていく必要があります。