めくるめく「将棋めし」の世界。東西の名品名店を紹介いたしましょう

【将棋コラム・ 観る将のつぶやき】アマ初段の免状を持つベテラン競馬記者の思い入れ記の4回目。今回はお腹がグーと鳴るお話。おまけで22年度順位戦予想も。このコラムは今回でひとまず終了。また会える日までウマいめし食べてお待ちください。過去3回のコラムもリンクしました。

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岡山俊明

棋士と一緒に将棋めし!

「新将棋会館建設プロジェクト」クラウドファンディングのリターン(返礼品)として、棋士と千駄ケ谷を散歩しながら将棋めしを楽しめる「東京将棋会館見学ツアー」が売り出されました。お値段は参加者1人7万円(10人限定)。これがどのリターンよりも早く売り切れ、なんと翌日には完売の告知が出されました。ツアーは9月23日に実施される予定です。

落札者に同行する棋士は先崎学九段&村中秀史七段と、伊藤真吾六段&藤森哲也五段の2組。ファンにはこたえられませんね。

あらためて「将棋めし」とは、棋士が対局中に頼む出前や、東西将棋会館近くでよく利用される店のメニューのこと。ホテルや旅館で行われるタイトル戦の食事、おやつのケーキやフルーツも含めましょう。

東京将棋会館そばのステーキハウス「チャコあめみや」の掲示板。やはり男は肉の塊が好きだ

東京将棋会館そばのステーキハウス「チャコあめみや」の掲示板。やはり男は肉の塊が好きだ

将棋めしは不思議なもので、どの食事も実にうまそうに見えるのです(対局中の棋士は、味を楽しむ余裕もないかもしれませんが)。加藤一二三九段が現役時代に好んだ「ふじもと」のうな重などは、新聞や雑誌の記述だけでつばが出たものです。将棋めしの魔力は恐ろしい。

今回のツアーをアテンドする先崎九段は弁が立ち、文筆家としても棋士にまつわる多数のエッセーを世に出しています。村中七段、伊藤六段、藤森五段はみな自分の番組を持つユーチューバー。この4人が参加者を飽きさせることは決してないでしょう。

東京将棋会館から近い「ほそ島や」

東京将棋会館から近い「ほそ島や」

さあ、ここからは予想になります。このツアーで訪れる店はまだ発表されていません。当日は秋分の日。定番の「ふじもと」や「千寿司」「ほそ島や」「鳩やぐら」は祝日定休日なので、これらの店ではなさそう。あっ、JR千駄ケ谷駅から将棋会館に向かう道沿いにあるステーキハウス「チャコあめみや」は有力かも。先崎九段の傑作「将棋指しの腹のうち」でも、至極のエピソードとともに紹介されています。一部を引用させていただきます。「チャコを総括すると、やはり男は肉の塊が好きだ、ということである。[略]四人、三人、ふたりで、食べた塊。ひとりで食べた若者も大勢いた。若き勝負師たちの闘う本能を肉というジャンルで満たしてくれている店がチャコである」。

どうです? おなかが鳴りませんか?

果たしてこの界隈を知り尽くす棋士たちがどの店に連れて行ってくれるのか、参加者だけのお楽しみですな。

西の代表「イレブン」の珍豚美人&バターライスセット。藤井竜王も大好物

西の代表「イレブン」の珍豚美人&バターライスセット。藤井竜王も大好物

一方、大阪の将棋めしは、関西将棋会館1階に入る洋食「イレブン」が定跡。藤井聡太5冠お勧めのバターライスと、よく出前で耳にする珍豚美人(ちんとんしゃん)が知られています。セットで頼むとジャスト2000円。バターライスは結構あっさりしていて癖がなく、珍豚美人は豚肉の表面がカリッとしていて独特の食感が楽しめる。もちろんおいしい。関西将棋会館は2023年度に今の大阪市福島区から高槻市に移転するため、店の人によると福島近辺で場所を探すそうです。

関西将棋会館1階の洋食「イレブン」

関西将棋会館1階の洋食「イレブン」

はす向かいの「やまがそば」も人気で、どんぶりの値段に100円足せば、そばやうどんがついてくる。大変お得感があるのです。親子丼は山椒が効いて食欲をそそります。

言うまでもなく胃袋は満たされ、棋士が好きなメニューを味わっていると思うと幸せになる。将棋が少し強くなった気もします。将棋めし万歳!

西の満腹店。「やまがそば」の親子丼定食。100円出せばそばが付く

西の満腹店。「やまがそば」の親子丼定食。100円出せばそばが付く

【おまけ~2022年度順位戦予想】

このコラムも今回でひと区切り。競馬記者のさがとして、挑戦&昇級予想は一興。各クラスの組み合わせが4月18日に発表されたので、勝手ながら印を付けさせていただきます。

〈A級〉挑戦1人

◎藤井聡太竜王

○(名人戦敗者)

▲豊島将之九段

進行中の名人戦で渡辺明名人の防衛か、斎藤慎太郎八段の奪取かで展開は変わりますが、最年少名人の期待が懸かるあの男を本命にしないわけにはいきません。藤井竜王の対戦順は佐藤康(1勝0敗)→菅井(5勝2敗)→糸谷(5勝0敗)→渡辺(12勝2敗)か斎藤(4勝3敗)→広瀬(5勝1敗)→佐藤天(3勝0敗)→豊島(13勝10敗)→永瀬(7勝3敗)→稲葉(4勝2敗)=数字は藤井から見た対戦成績(4月25日現在)。谷川浩司九段の最年少名人19歳11カ月を塗り替えるチャンスは1度だけ。まずは挑戦者にならなければなりません。全局が注目です。

〈B級1組〉昇級2人

◎千田翔太七段

○佐々木勇気七段

▲羽生善治九段

前期次点の千田七段、前半7連勝した佐々木七段が有力。A級から初めて降級となった羽生善治九段は年度初の負け越し(14勝24敗)も心配だが、このまま引き下がるとは思えない。

〈B級2組〉昇級3人

◎木村一基九段

○大橋貴洸六段

▲阿久津主税八段

△松尾歩八段

△増田康宏六段 

前期B1の木村九段、松尾八段、阿久津八段は候補から外せない。木村九段は初戦の阿久津戦がポイント。阿久津八段も次戦松尾八段と強敵が続く。C2→C1→B2と連続昇級の大橋貴洸六段が割って入る。順位6位の増田六段も圏内。

〈C級1組〉昇級3人

◎出口若武六段

○渡辺和史五段

▲伊藤匠五段

△西田拓也五段

叡王戦で藤井5冠への挑戦を決めて充実している出口六段は、前期7勝3敗で足掛かりを作った。ほか3人はC2から昇級組を買った。渡辺和五段は昨年度20連勝を達成して将棋大賞連勝賞を受賞。伊藤匠五段は勝率8割1分8厘(45勝10敗)で、同い年の藤井5冠をしのいで将棋大賞勝率1位賞に輝いた。西田五段も格上をしばしば破って実力を伸ばしている。

〈C級2組〉昇級3人

◎服部慎一郎四段

○本田奎五段

▲佐々木大地五段

△梶浦宏孝七段

△黒沢怜生六段

△池永天志五段

△斎藤明日斗五段

△高野智史六段

△八代弥七段

大激戦区で絞れません!

◆新将棋会館建設プロジェクト◆日本将棋連盟は創立100年を迎える2024年に、東京将棋会館(1976年建設)の移転が計画されており、クラウドファンディングによる財源の提供を呼びかけている。第1期は目標1億円に対し11億4526万円が寄せられ、4月1日から第2期(目標1億円)がスタート。オリジナル直筆色紙55万円)、羽生善治九段の特別指導対局権(300万円)、羽生九段、渡辺明名人、森内俊之九段、佐藤康光九段ら名人経験者の書による盛上駒(350万円)などさまざまなリターンが用意されている。

関西将棋会館のはす向かいにある「やまがそば」

関西将棋会館のはす向かいにある「やまがそば」

◆岡山俊明(おかやま・としあき)1965年、東京都生まれ。89年入社。ただのライトな将棋ファンで、観る将としてもまだまだ級位者。競馬記者歴25年以上。競馬デスク時代に何度か棋士の方々に紙面で予想をお願いした。日本将棋連盟アマ初段の免状はあるが、指す将としては実戦不足が甚だしく弱い。