榊原郁恵「ピーター・パン」から40年 ホリプロ初のロングラン「ハリポタ」の舞台裏に迫る

ストーリーズ

林尚之

舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」が7月8日、東京・赤坂ACTシアターで幕を開けた。2016年にロンドンで初演され、世界的に大ヒットした話題作。制作するホリプロが初めて舞台を手掛けたのは1981年のミュージカル「ピーター・パン」。それから40年、今年のホリプロ制作の舞台は20作近くを数え、「ハリー・ポッター」では初のロングランに挑む。

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ホリプロに「ハリー・ポッターと呪いの子」上演が持ちかけられたのは18年だった。ほかにも日本での上演を計画するところはあったが、英国の制作会社はホリプロを指名した。ホリプロは、英国でも有名な演出家蜷川幸雄さんがシェークスピア全37作を演出する「シェイクスピア・シリーズ」制作に携わり、ロンドンをはじめ世界各地でも公演を行った。さらにロンドン発のミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」「メリー・ポピンズ」を成功させていた。

公演事業を統括する梶山裕三ファクトリー部長は「そういう実績があって、ホリプロの認知度と信用が高くなったのかもしれません」と話す。ただ、難問もあった。「ハリー・ポッター」は多額の制作費がかかりロングランが不可欠で、魔法の仕掛けがあるため劇場の改造も必要だった。ホリプロは劇場を所有していないが、赤坂ACTシアターを持つTBSと共同制作することでロングランが可能となった。梶山部長は「当初は初のロングランに無謀という声もありましたが、プレビュー公演の3万枚のチケットが6時間で完売。初日8日には来年1月から5月までのチケットを先行発売します」とロングランへの手ごたえを感じている。

歌手などのタレント事務所として始まったホリプロが初めて舞台を手掛けたのは1981年のミュージカル「ピーター・パン」。新宿コマ劇場で榊原郁恵が主演した。フライングが話題を呼び、毎年上演される人気公演となった。以降、「シェイクスピア・シリーズ」のほかに井上ひさし作「ムサシ」、村上春樹原作「海辺のカフカ」など蜷川演出の舞台を数多く手掛け、劇団四季出身の鹿賀丈史、市村正親の加入でミュージカルにも力を入れた。「昔は赤字の公演が続き、会社のお荷物と言われた」(梶山部長)時期もあったが、ここ数年、年20作前後の舞台を上演している。

海外作品だけでなく、オリジナルにも手を広げ、漫画を原作にしたミュージカル「デスノート THE MUSICAL」(演出栗山民也)は2015年に初演された。その2カ月後には韓国でも韓国人キャストで上演され、今年も韓国で3度目の公演が行われている。18年には黒澤明監督の名作映画「生きる」を宮本亞門演出、市村・鹿賀のダブルキャストで上演し、21年には人気漫画「北斗の拳」のミュージカル版「フィスト・オブ・ノーススター」を初演した。

海外進出にも意欲を見せ、ブロードウェーの作品にも出資を始めた。その1つ、「バンズ・ヴィジット」は18年のトニー賞で10冠を獲得し、授賞式に出席した堀義貴社長(現会長)も出資者の1人として登壇した。「バンズ」は日本でも来年上演が決まっている。梶山部長は「ブロードウェーにオリジナル作品を持っていくのが夢。いつか実現したい」。今のホリプロには、夢を夢で終わらせない勢いがある。

◆舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」 世界的な人気ファンタジー小説「ハリー・ポッター」シリーズの8番目の物語をもとにした舞台。「ハリー・ポッターと死の秘宝」の19年後を描き、大人になったハリーは3人の子の父となっている。次男アルバスはホグワーツ魔法魔術学校に入学するも、父に反抗的。現在と過去が交錯する中、父子に新たな闇が襲い掛かる。16年にロンドンで初演され、その後、ブロードウェーなどで上演され、東京公演が世界で7番目の上演。6月16日からプレビュー公演が行われ、本公演は7月8日から。

石丸幹二(56)は藤原竜也(40)向井理(40)とトリプルキャストでハリー・ポッターを演じる。

石丸は2020年2月初め、ニューヨークで「ハリー・ポッターと呪いの子」を見た。「今までいろいろな舞台を見てきたけれど、『ライオンキング』以来のショックを受けました。会場に入って、ショーが終わるまで、息つく暇もなく、魔法の世界、夢の世界に引き込まれていった。日本でやったら大ブームになると思ったし、僕も出たいと思いました」。

チャンスはすぐに訪れた。ホリプロが上演することを知り、オーディションを受けた。「ハリーは37歳の設定で、年齢的にひっかかるかなと思ったけれど、幸いにも合格できました」。稽古には2カ月半もかけている。「作品にどっぷりつかっています。演出家にはシェークスピア劇のせりふをしゃべるようにやってほしいと言われました。半端じゃない魔法やイリュ-ジョンがいろいろ出てきて、3分に1度は驚くシーンがある。でも、魔法だけじゃなく、父となったハリーと息子との絡まった糸がほぐれていくところなど、ドラマとしても見どころがたくさんあります」。

石丸ハリーの登場は8月12日から。ロングランは劇団四季時代に経験しているが、「長い公演期間中には体調も悪い日もあるだろうけれど、スポーツ選手と同じでその中でもアベレージを保つことが大事と思っています。劇場に来られるお客様に対して一期一会の気持ちで向き合いたい」。ロングラン中にもテレビ朝日「題名のない音楽会」のMCなどは継続する。「9月までは藤原君、向井君とのトリプル、以降は向井君とのダブルなので、問題はありません。ただ、この年齢でのロングランは初めてなので、体力をしっかりとつけて、若さを保って演じていきたい」

ホリプロ制作の舞台には「ラブ・ネバー・ダイ」「パレード」「蜘蛛女のキス」などに出演している。「ホリプロは世界の演劇の中で、どんな作品が流行しているかに目配りしている。着実に成果を積み重ね、今回、ホリプロは初めてのロングランに挑むなど、前に突き進んでいる勢いを感じます」。石丸ハリーは来年5月末までの出演が決まっている。

◆ホリプロの舞台

・1981年 ブロードウェー・ミュージカル「ピーター・パン」

・97年 大竹しのぶ主演「奇跡の人」

・98年 蜷川幸雄演出シェイクスピア・シリーズ第1弾「ロミオとジュリエット」

・2009年 井上ひさし作、蜷川演出「ムサシ」

・11年 ミュージカル「スリル・ミー」「ロミオ&ジュリエット」

・12年 村上春樹原作、蜷川演出「海辺のカフカ」

・14年 ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」

・15年 栗山民也演出「デスノート THE MUSICAL」

・17年 ミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」、市村正親主演、蜷川演出「NINAGAWAマクベス」ロンドン公演

・18年 ミュージカル「生きる」「メリー・ポピンズ」

・21年 ミュージカル「オリバー」「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」