坂本冬美がカラオケ指南 コロナ禍で声が出にくくなった方にも!マル秘5箇条

ストーリーズ

取材・構成=松本久

2年以上に及ぶコロナ禍で、カラオケ愛好家の人たちの歌う機会が激減した。コロナが落ち着いて久しぶりにマイクを握ったところ、「あれっ声が出ない」「こんなはずじゃ…」と嘆いている人も多いのでは? 歌謡界の第一人者、坂本冬美(55)が上手に歌うためのコツや準備を教えてくれた。みなさん、第7波が落ち着いたら、また歌ってみませんか?

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NHK紅白歌合戦に昨年まで33回出場。そんな坂本“センセイ”が快くカラオケ指南を引き受けてくれた。主な注意点は5つあるという。

(1)メリハリが大事 例えば「夜桜お七」(94年)はメリハリがはっきりしていますよね。前半のスローな感じで始まる「♪赤い鼻緒が-」なんかは、大きな声で歌う必要はまったくないです。ささやくように、普通に会話をしているような声でいいんです。安心してくださいね。今は良いマイクがありますから(笑い)。で、盛り上がるところになったら「ドーン」といけばいい。「ここはちょっと感情を入れて」「ここはウィスパーで」と考えて歌うと、一層うまく聞こえるような気がします。ドーンといきっぱなしとか、ささやきっぱなしの一本調子じゃダメですよ。

(2)「てにをは」ははっきり言わない これは恩師の猪俣公章先生に教えていただきました。新曲「酔中花」でいうと「♪お酒が-」の「が」をあまり強調しない。つまり、言葉(単語)をきっちり伝えるということだと思うんです。猪俣先生は「歌詞を大事にしなさい」とおっしゃってました。詞の意味を自分なりに理解して歌うと一層良いですね。

(3)いろんなジャンルを楽しむ リズムでいうと、演歌って後ノリでもいいわけです。でも、ポップスやロックは後ノリだと、ちょっとかったるい感じになったりしますね。歌とリズムを楽しみながら、いろんなジャンルの曲に挑戦するのはいいと思います。でも1つの小節から出てはダメ。ちょっと前のめりになったり、後ろにずれていくのはありですけど、次の小節にまで差しかかってずれるのは、締まりのない歌になってしまうと思います。

(4)ハミングが大事 午後6時に会社が終わって7時から歌う。そんな時の準備運動としてのお勧めはハミングです。声に出さずに口をつぐんでいても、もちろんOK。意識するのはノドではなく鼻から上に響かせるイメージ。実は多くの歌手がしています。

(5)でも、最終的には好きなように歌うのが一番! プロを目指している人は別ですけど、技術的なことよりも、カラオケが好きで歌うなら、気持ち良く歌うことが一番です。他人が何を言おうと、メロディーがちょっとくらい違おうと、歌詞を間違えようと好きなように歌ってください。声が出なくったっていいんです。ストレス発散ですよ! ただ、気持ち良く歌うためには、ちょっとのどを温めてからの方がいい声が出るんじゃないかと思いますけどね。

2年以上に及んだコロナ禍で、公演やイベントは中止や延期が相次いだ。

私ね、ちょうど20年前に1年間仕事をお休みしているんです(02年3月から1年)。だから分かるのですが、何カ月も歌っていなければイメージ通りの声が出るわけないんです。それどころか、のどが開かない。スコーンと抜けずに、何か膜が張ったような声になるわけです。思い通りの声が出るまで何カ月もかかる。その経験があるから、歌えない焦りや恐怖心がすごくありました。

お客さまの前に実際に出ることができた時に、歌を届けたり、会話のキャッチボールをする感覚が薄れちゃうんじゃないかという不安もありました。だから、常にイメージトレーニングをしていましたね。

そして、2、3日に1回は自宅で2時間近く声を出して歌っていました。YouTubeの配信を始めた(20年4月)のも、ちゃんと歌えるのだろうかという怖さがあったからなんです。

もし、自分がまだ20代だったら、先が見えない不安の中でスパッと歌手を辞めていたかもしれない。それくらいの深刻な状況でした。もう、この年でここまで来ちゃうと、今更お嫁にも行けないし、歌うしかないわけですけどね(笑い)。趣味がないので、何か夢中になるものがないと余計なことを考えてしまうんです。悲観的になってばかりでもいけないので、ガーデニングをしたり、韓流ドラマを見たりして気分転換をしました。モチベーションを維持するのが本当にとても難しかったです。

歌えるようになって、最初の単独コンサートでは、幕が開く時に「お客さまがいてくださるだろうか…」という怖さがすごくありました。でも、実際に幕が開いたら喜びが込み上げてきた。お客さまが歌手を生かしてくれるし、成長もさせてくれる。そのことを心から痛感したし、あらためて感謝しました。

今、第7波が来ていて、カラオケを楽しむ機会は少ないかもしれない。ただ、この期間にもできることがある。坂本が実践しているプロの「のどのケア」。アマの歌い手にもマネできる部分がありそうだ。

(1)いつもマスク のどを守るためにもう何十年も、移動中でもマスクをしています。寝る時には口呼吸をしないように、いびき防止のシールを唇に張って、その上にマスクをしています。気が付くと、口って開いていることが多いじゃないですか。マスクをしていても自然と開いてることもあります。だからシールを張るんです。

(2)準備運動が大切 朝、起きたらストレッチをして体を温めながらのどを開くために発声練習をしています。大きな声でなくてもいいんです。低い音から高いところへ。歌う前も十分にのどを温めます。若い人は声帯に柔軟性がありますけど、年齢とともに固くなっていきますよね。少しずつ和らげていって、周りの筋肉を徐々に温めてあげるのが声帯に大事なことだと思います。私は普段ハスキーな声で、「無理に発声をするとポリープができるよ」と、これまでに何人にも言われたんですけど、1度もできたことがないんです。自分の声帯が弱いのを自覚しているから、決してむちゃな声の出し方はしません。

みんなで歌える日々はきっと来る。坂本“センセイ”の教えを参考に、その日に備えてみてはいかがでしょうか。

◆坂本冬美(さかもと・ふゆみ)1967年(昭42)3月30日、和歌山県生まれ。86年に故猪俣公章氏の内弟子になり87年に「あばれ太鼓」でデビュー。「夜桜お七」「また君に恋してる」などヒット曲多数。血液型O。

新曲「酔中花」のコツも教えます

坂本は新曲「酔中花」を歌うときのコツと、レコーディングの際の裏話も披露した。

(1)とにかく甘~く 最初の「♪後をひくよな 口づけを」。これは、歌うのではなく、ささやくように甘~く、気だるく歌うっていうのが作曲してくださった徳久広司先生の指導でした。「♪後をひくよんなぁ~」みたいにちょっと鼻にかけて。「♪口づけを」は語尾をちょっと残す感じ。「♪やだな めめしくて」も最後を「てぇ~」と伸ばして歌いたいかもしれないけどしません。「…て」と、置くような感じにすると余韻が残るでしょ。「てぇ~」としちゃったら、ちっともめめしくないじゃないですか。

(2)歌詞の最後「酔中花」の「か」に大苦戦 徳久先生に「その『か』じゃない」「その『か』でもない」と何度ダメ出しされたか…。すごかったんですよ。10回以上は歌いました。でも、普段歌っていると、その時のことを忘れてしまって“地”の「男唄」の歌い方が出ちゃう。それで「あれっ」ってなっちゃうんですね(笑い)。