リオデジャネイロ・パラリンピック陸上男子走り幅跳び(T42=切断など)銀メダルの山本篤(35=スズキ浜松AC)が、世界選手権(7月14日開幕、ロンドン)での雪辱を誓った。9日、都内で日本選手権の前日会見に出席し、跳躍フォームを修正していることを明かした。今日10日から2日間、東京・駒沢陸上競技場で開催される日本最高峰の舞台を調整の場とし、リオで敗れたハインリヒ・ポポフ(ドイツ)を倒して3連覇を達成する。

 その瞬間、穏やかだった表情が引き締まった。リオで金メダルを奪われたポポフとの再戦について聞かれた山本は、力強く言い放った。「勝ち逃げは許しませんよ。日の丸をつけるからとかじゃなく、自分のパフォーマンスで王座を守ります」。6メートル77の世界記録を持つ宿敵は、世界選手権を最後に引退を表明した。リベンジの機会は7月のロンドンしかない。

 跳躍フォームを修正中だ。リオのビデオを入念にチェックし、空中姿勢が崩れたことが敗因と判断した。踏み切り後に体が右に傾き、ジャンプが左に流れるのを「できるだけ真っすぐにしたい」。助走のスピードを最大限飛距離に結びつけるのが狙いだ。「練習より実戦」が持論の山本にとっては日本選手権さえも調整の場。「記録にこだわらず、6メートルを基準にイメージを実戦でどれだけ実現できるかです」。7月初旬の関東パラにも出場を予定する。

 世界選手権の優勝ラインを6メートル30~6メートル40と想定する。その上で「自己ベスト(6メートル62)に近いジャンプができれば」と勝利への青写真を描く。フォーム修正しながら世界3連覇を狙うのも、すべては20年東京で表彰台の一番上に立つためだ。ファンに「山本篤がいるから競技場へ行こう」と思わせるアスリートを目指して進化を続ける。【小堀泰男】(おわり)

 ◆山本篤(やまもと・あつし)1982年(昭57)4月19日、静岡県掛川市生まれ。掛川西高-大体大-大体大大学院。高校2年の時のバイク事故で左大腿(だいたい)部から下を切断。高校卒業後に陸上を始めた。パラリンピックは08年北京から3大会連続出場。世界選手権では13年、15年と走り幅跳び連覇中。今年2月にスノーボードクロスの国内大会で優勝し、来年3月の平昌パラリンピック出場も視野に入れている。167センチ、59キロ。