女子400メートル(視覚障害T13)で19歳の佐々木真菜(東邦銀行)が1分0秒19のアジア新記録で優勝した。同走した昨年のリオデジャネイロ・パラリンピック銅メダリストで、T47(切断など)クラスの辻沙絵(22=日体大)にも競り勝ち、同じくアジア新で制した10日の200メートルとの2冠を達成。初出場する世界選手権(7月14日開幕、ロンドン)での飛躍に自信をつけた。

 アジア新記録にも佐々木は「悔しかった」と切り出した。「コンディションも良かったし、自分では59秒台だと思ったので」。5月にマークした新記録を1カ月で0秒22更新したが、走るたびに記録を塗り替える成長株は、その程度の進歩では満足できないようだった。

 障害クラスの異なる辻とのマッチレース。59秒72のベストタイムを持つリオ大会銅メダリストに食らい付き、残り50メートルで逆転した。「初めて辻さんに勝てたのでうれしい」。中1~高1までは800メートルと1500メートルの中距離が専門。「粘り強さでは負けないです」と白い歯を見せた。

 生まれつきの弱視で「見え方はぼんやり」(佐々木)。特にまぶしい光が苦手でサングラスが欠かせない。この日はレース直前に雲が出て日が陰り、風も止まった。「ちょっと曇っていたのでよかった」。絶好調の勢いが、運さえも引き寄せたようだった。

 昨年、福島県立盲学校(現福島県立視覚支援学校)高等部を卒業して東邦銀行に入行。今は総合企画部所属で健常者と一緒に練習している。「自分のタイムが上がっても(健常者の)先輩のレベルには到達できない。だから私もさらに上を目指せる」。取り組んできた腕を下げてしっかり振るフォーム改造も好結果の要因になっているという。

 初出場する世界選手権は59秒台での入賞が目標。そして「20年には55秒台を出してメダルを狙いたい」。世界記録は54秒46。5秒という高いハードルも今の彼女には「3年あれば」と期待させるまぶしい輝きがある。夢物語ではない。何しろ佐々木はまだ19歳なのだから。【首藤正徳】

 ◆佐々木真菜(ささき・まな)1997年(平9)9月2日、福島市生まれ。中1から陸上を始める。16年3月に福島県立盲学校(現福島県立視覚支援学校)高等部を卒業。同4月に東邦銀行に入行。同6月のジャパンパラ大会で200メートルと400メートルの2冠達成。今年5月の大分パラで200メートル26秒71、400メートルで1分0秒41の日本新記録を樹立。153センチ、43キロ。