世界選手権3連覇の登坂絵莉(22=東新住建)がマリア・スタドニク(28=アゼルバイジャン)を破り、初出場の五輪で金メダルを獲得した。日本レスリングチームで今大会の金メダル第1号となった。

 厳しい展開を最後の最後でひっくり返した。相手は15年の世界選手権の決勝で対戦し、終了間際に逆転した難敵だった。第1ピリオド開始1分で場外に押し出されて1失点。第2ピリオドも30秒で消極的姿勢で口頭注意を受け、アクティビティタイムに得点できずさらに1失点。警告も受けた。残り1分を過ぎて1点差としたが、相手は逃げ切りを図る。残り13秒で相手の右足をつかむと、執念で離さず持ち上げる。残り5秒でバックを取り逆転の2ポイント。世界選手権と同じ相手に同じ展開で逆転勝ちした。

 試合後は栄強化本部長を肩車してマットを1周。さらに日の丸を掲げて1周した。目にはうっすらと涙が浮かんでいた。「良かったです。(勝った瞬間は)いろんな人の顔が浮かびました。感謝です。特に弱いときから信じてくれた家族です」と話した。

 最後の場面は「もうここしかないと思って、これで取れなかったら後悔すると思って力を入れて、最後取りました」と振り返った。今年2月のアジア選手権で3年半ぶりに敗れ、連勝記録が59で止まった。その屈辱を乗り越えての栄冠だった。

 表彰台に上がると両手を挙げて振り喜んだ。メダルをじっくりと見つめた。君が代を口ずさみながら掲げられる日の丸を見つめ涙を流した。最後は明るい笑顔を見せた。「(金メダルは)本当に最高ですね。柔道の田知本(遥)さんに見せてもらっていたので、自分もこれが欲しいな思った。自分の手に入ったんだなと思いました。」とメダルを実感していた。

 スタンドでは両親が応援していた。「『思い切ってやってこい』と言われていたので、絶対に勝って喜ばしてやると思っていた。人生で今のところ一番の親孝行ですね」と笑った。

 女子レスリングで先陣を切る金メダル。「重圧はなかったんですが、自分だけメダルを取れないとか悔しい思いをしてきたので、自分がメダルを取ることでみんなに勢いを付けられると思って取りました。これからみんなを応援します」と、大きな役割を果たした安堵も感じさせる優しい笑顔で話した。