射撃界のオシャレ女子にとって、悔しいパラリンピック初出場となった。

水田光夏(みか、24=白寿生科学研究所)は今大会に合わせて大会マスコットキャラクター「ソメイティ」などが描かれたネイルに、ラベンダー色にピンク色のメッシュを入れた髪形。ピンクと黒を基調としたユニホーム姿で登場し、10メートル先の的を狙った。男女混合の種目の中、ひときわ華やかだった。自己ベストの638・3点を目標に掲げていたが、「惜しかったとかいうレベルじゃない。恥ずかしい点数をとってしまった。点数を見て、こりゃどうしたもんだと思った」と苦笑い。それでも「ネイルのデザインも大会に向けて何カ月も前からいろいろ考えて決めたもの。ヘアカラーもインスタでいろいろ見ていて、この色がかわいいからやりたいって思っていたもの。ヘアカラーはどんどん色落ちさせて、当日に良い折にしていきたいという思いもあったので、やった瞬間もテンションが上がるし、日々色を整えるのも楽しかった。(弾道が)どんどん左に行っちゃって、ちょっとイライラしていたんですけれど、ネイルを見ていったん落ち着いて『次っ』みたいな感じでいけたので、すごい助かった」。精神安定剤であり、パワーの源でもあった。

自己ベストを出していれば予選3位通過だったが、628・6点の32位に終わった。60分間以内に60発を撃った合計得点で順位を争うが、31~40発目の第4シリーズでトラブルが発生した。水田は中2の春に四肢の筋萎縮や筋力が低下する「シャルコー・マリー・トゥース病」と診断されているが、試合中に急に呼吸が苦しくなった。今までは競技中にも酸素吸入を行っていたが、今年5月のプレ大会で、試合の公平性を理由に、大会運営側から使用不可をいきなり伝えられた。不安は的中。日本代表監督がかけつけ一時中断。「3シリーズ目で、もうちょっと落ち着いてやればいけるかなと思ってのですが…。4シリーズ目の途中からは呼吸が息苦しくなってボロボロ泣いてしまったこともあまり覚えていなくて。修正することも出来なかった」。記憶のないまま、60射は撃ち終わったが、正気に戻れたのは試合後だった。

今後も23年パリ大会出場に向けて、競技は続ける意向だ。「コロナで伸びたこの1年で成長することは出来たと思う。この状態で撃つのは100%は出し切れないので、認められるように申請はしたいし、何か対策があるかを探していきたい」。充実した精神面は大舞台でも通用することはわかった。病気と共存出来る方法も模索し、自己ベスト更新継続でパリでのメダル獲得に挑む。【鎌田直秀】