バレーボールVチャレンジリーグ元選手の小松沙季(26=高知県協会)は、女子バーシングル(運動機能障害VL2)準決勝1組で1分8秒477の4着となり、各組上位3人の決勝進出を逃した。

前日2日の予選から6秒近くタイムを縮めたが「選手として負けることは、やっぱり悔しい。自分の実力はわかっているし、悔しい思いをすることは覚悟していたのですが…。世界の壁は高いなと感じました。でも、そういう選手と戦えた喜びのほうが、すごく大きいです」。左手の握力がほどんどないが、雨でパドル(カヌーを操る道具)が滑る中でも懸命な姿を披露した。

18年まで現Vリーグ2部のブレス浜松に所属。現役を引退し、指導者として新たな道を進み始めた19年6月、突然の体調不良で両足と左手にまひが残った。約1年間の入院後、車いす生活となったが、未来のアスリートを発掘する「ジャパン・ライジング・スター・プロジェクト」に参加して、カヌーに出会った。

今年3月に本格的に競技を開始。2カ月後のW杯(ハンガリー)で5位に入り、日本代表の内定をつかんだ。パラリンピックまで、競技生活半年での大舞台に、悩みを抱えた時期もあった。「個人的にもカヌーやパラスポーツの価値を上げたいと取り組んでいる中で、始めてすぐに出るというのは(パラ競技の)価値を下げてしまうのではないかという葛藤もあった。楽に出ようというわけではないですし、全力で毎日取り組んで、そこに甘えずにやってきたので、そういう部分も含めて理解してもらいたい気持ちもあります」。

16年リオデジャネイロ大会では日本人の出場は8位入賞の女子カヤック瀬立モニカ(23=江東区協会)だけだったが、今大会は男子3人、女子3人の計6人に増加。「注目してもらうためにも結果を残したい。次のパリ大会では必ずメダルをとりたいと思いますし、今回の悔しい思いも、金メダルをとるために必要になってくる経験だったと思う。一生記憶に残るような収穫だらけの大会。カヌーを始める環境、きっかけ作りが重要ですし、どんどんライバルが出てきてほしい」。パラカヌーの知名度アップ、競技人口増加に貢献するためにも、さらなる飛躍を誓った。【鎌田直秀】