【座学】根尾昂が感覚を取り戻すきっかけ 浅尾コーチのフォークを至近で感じて〈後〉

選手の技術面に加え、人間性やドラマにも迫る田村藤夫氏(63)の「プレミアムリポート」は、中日根尾昂投手(22=大阪桐蔭)の後編です。前編では2月の沖縄・読谷キャンプで制球に苦しみながら、ファームで実戦復帰するまでの取り組みなどを聞きました。後編では大阪桐蔭の仲間への思いなどをインタビューしました。 

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試合後にもかかわらず爽やかな表情でインタビューに応じてくれた根尾昂投手(撮影・田村藤夫)

試合後にもかかわらず爽やかな表情でインタビューに応じてくれた根尾昂投手(撮影・田村藤夫)

「とことん自分と向き合って」

田村氏さっき、浅尾コーチ、山井コーチと話したんだけど、「こんなに早く投げられるようになるとは思いませんでした」って。あの2人は、「僕らは何にもしてませんよ」って。「根尾が1人でやってましたって」って言ってた。

根尾いやあああ。

田村氏「相当投げてたし、すごいですよ」とは言ってたよ。

根尾いや、でも、本当に、おふた方とも、山井さんも、浅尾さんも、自分の感覚っていうものを、「俺はこういう時、こうやったら良くなったよ」とか、言ってくださって。

田村氏ああ、そういう話を2人はしてくれたんだ。

山井コーチが見守る中、8日ぶりにブルペンで本格投球練習を行った=2023年2月16日

山井コーチが見守る中、8日ぶりにブルペンで本格投球練習を行った=2023年2月16日

根尾はい、とことん、してもらって上で、やっぱり自分の感覚をしっかり戻せるっていうのと、戻すっていうよりかは、悪くなる前の状態より、もっと良くしたいというのは正直なところで。よりキャンプでとことん自分と向き合って、浅尾さんに手伝ってもらって、向き合ったことで、よりもっと良くなるなって、自分の中で思えたんで、それが一番です。まあ、考えすぎではありましたね。

田村氏その時っていうのは、コーチの方から言ってくれたの? それとも根尾の方から言ったの?

根尾山井さんも、浅尾さんも、多分、言いづらいとは思うんですけど、練習を親身になって見てくれて『今日何やる?』って言ってもらえて。僕は何もなくて、調子めっちゃ良かったら、そんなこともなかったと思うんですけど、コーチとしてどうにかしたいっていう思いで、来てくださって。本当に、毎日、毎日「今日はこれやってみようよ」って、言われながらやってて、本当に助けていただきました。

「投げられるだけの体力はある」

田村氏今日の練習は毎日ルーティーンでやってんの?

根尾投げた日、投げない日とかで、強度とか全部変えながらやるんですけど。

田村氏うん、うん。

根尾それは、12月にアメリカに行って、いろいろ勉強して、トレーニングするだけじゃなくて、先発ピッチャーとしてどういう風にしていくか、という話をしていたんですけど。リカバリーの話とかもしながら。ピッチャーになって、投げることしかできなくて、休めることなどがわかんなくて。そこをちょっと勉強して、ちょっと頭は違いますね。

田村氏練習内容は毎日同じではないのかな?

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1959年(昭34)10月24日、千葉・習志野出身。
関東第一から77年のドラフト6位で日本ハム入団。93年に初のベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞。
93年オフ、巨人長嶋監督からFA移籍でのラブコールを受け(日本ハムに残留)、96年オフには、当時の王監督(現会長)から直接電話でダイエー(現ソフトバンク)移籍を決断。07年から中日落合監督に請われて入閣した。
ONと落合氏から高く評価された捕手だが、田村氏はそうした経緯について「自分から人に話すことではない」というスタンスをかたくなに守る。42年間のプロ野球生活を経て解説者に。プロ通算1552試合出場、1123安打、110本塁打。