広島スキッベ監督(2022年6月18日撮影)
広島スキッベ監督(2022年6月18日撮影)

ドイツ流に生まれ変わったサンフレッチェ広島が上位に迫る勢いだ。前半戦最後の試合となった18日のセレッソ大阪戦で2-1と逆転勝ち。中断期間を挟んでの3連勝で5位に浮上した。

新型コロナウイルスの影響でドイツ出身のミヒャエル・スキッベ監督(56)の来日が遅れた開幕当初は5戦未勝利と苦しんだが、その後は調子を上げ、4月以降に限れば7勝3分け1敗の勝ち点24は最多。首位で前半戦を折り返した横浜の同時期の22を上回る。

今季就任の新監督の戦術が浸透し始めた4月以降の11試合は18得点、8失点と攻守両面で安定。シュート数は1試合平均14本を数え、被シュート数はその半分の同7本に抑える。

ドイツ代表コーチの経験がある新指揮官はアグレッシブな攻撃サッカーを掲げ、高い位置からのプレスを徹底。11月開幕のワールドカップ(W杯)カタール大会で日本代表が対戦するドイツ代表のように攻守の切り替えを早めて前進し、相手の自陣への進入を許さない。

その原動力となっているのが期限付き移籍から復帰したMF野津田岳人(28)。中盤の底で長短のパスをつなぎ、豊富な運動量で自らも前後左右に走って攻撃にリズムを生み出す。威力抜群の左足キックも磨きがかかり、C大阪戦で決めた無回転ミドルは圧巻だった。さらに守備でも奮闘し、ボールを失っても即時奪回。1試合平均のタックル数3・8回はリーグ1位だ。

広島野津田岳人(2022年5月28日撮影)
広島野津田岳人(2022年5月28日撮影)

チームは新型コロナウイルスの影響で1試合消化が少なく、首位横浜を勝ち点7差で射程圏に捉える。このままの勢いならアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場権だけでなく、7年ぶりのJ1制覇も夢ではないかもしれない。

【石川秀和】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「データが語る」)


<ドイツ国籍のJ1監督>

ヘルト(G大阪)95年 18勝0分け34敗

ケッペル(浦和)97年 17勝0分け15敗

エンゲルス(横浜F、市原、京都、浦和)98~03、08年 51勝12分け48敗

ブッフバルト(浦和)04~06年 58勝19分け21敗

オジェック(浦和)95~96、07~08年 68勝10分け40敗

フィンケ(浦和)09~10年 30勝10分け28敗

フィンク(神戸)19~20年 15勝11分け14敗

スキッベ(広島)22年~ 7勝6分け3敗

※スキッベ監督の成績は迫井深也コーチが暫定的に指揮した開幕2戦を含む


◆ドイツ国籍のJリーグ監督 J1では今季のスキッベ監督が8人目。広島では初のドイツ人指揮官となる。8人のうち浦和を率いた経験があるのは5人。現役時代に西ドイツ代表DFとして90年W杯イタリア大会で優勝したブッフバルト氏は06年にJ1制覇。その後を引き継いだオジェック氏もACL優勝に導いた。J2では90年W杯優勝メンバーのリトバルスキー氏が横浜FCと福岡で監督を務めた。