学校法人国士舘の大澤英雄理事長(87)は、学校業務とサッカー現場の仕事を精力的にこなす。競技に携わって75年。理事長の仕事が優先しつつ、今でもサッカー部の練習にほぼ毎日顔を出し、試合にも足を運ぶ。初めての入院を機に健康に目覚め、長女・志保子さんの自家製酵素液を欠かさない。家族の支えとサッカーの現場が健康の秘訣(ひけつ)だ。
大澤理事長は、60~70代にかけてサッカーの現場を約8年半離れた。中学2年からボールを追い、50年以上もグラウンドに立つのが日課だった。しかし2004年に国士舘大サッカー部の不祥事があり、その責任を取ってサッカー界から離れた。週末だけは試合会場を訪れ、スタンドの目立たないところで、弟子たちの戦う姿を見守った。
現場を離れて3年。その日も千葉県のスタジアムでスタンド観戦し、川崎市の自宅に戻る途中だった。具合が悪くなり、途中で車を降りてトイレに駆け込むと気を失った。下血して口から泡を吹いていたという。救急車で都内の病院に運ばれ、気がつくと、医師と看護師の会話が耳に入った。大澤理事長は「580という数字が聞こえたんです」。
同理事長 580って何ですか?
医療陣 血糖値です。
同理事長 誰の?
医療陣 あなたのです。
ショックだった。甘いものが大好きで大福4、5個を一気に食べた。肉が好きな一方で、野菜や魚はあまり取らないなど、食生活のバランスはよくなかった。ただ、サッカーに関わる中で自然と体を動かすことは欠かさなかった。それまで内科系の病気には縁がなかった。
入院を機に健康に目覚めた。長女・志保子さんが手作りしていた酵素液を本格的に勉強し始めた。1級河川敷で自生する、スギナ、タンポポ、ヨモギなど約50種類の野草を手摘みして材料にした。春は野草、夏は梅、秋から冬にかけて季節の野菜・果物・実物など約100種類から年間約100キロの酵素原液を作る。
30CCの原液を水で4~5倍に薄め、朝と昼に必ず飲む。疲れたときは夜も飲むことがある。大澤理事長は「酵素を飲んでから風邪も引かなくなった」。志保子さんは「酵素を飲むと疲れが取れるようです。家で使用する食用油にも気を使っていて、ご飯にも寒天を入れるなど工夫しています」と話した。
サッカー界を離れて8年後の13年7月。サッカー部の主将らが理事長室を訪れ「勝たせてください」と現場復帰を直訴された。当時リーグ戦前期11試合で勝ち点3のダントツ最下位。弟子たちの強い気持ちに導かれ、8年ぶりに現場に戻った。後期は11試合で10勝1分けの勝ち点31と、2部降格の危機を救い、その年の全日本大学選手権では準優勝した。「サッカーの現場に戻らなかったら、私はもう死んでると思いますよ。大好きなサッカーに関わり、ストレスもなくなって若い選手と日々接してエネルギーをもらってるので、健康でいられる」。
家族の支えと酵素パワーと、大好きなサッカーに没頭して若いエネルギーも吸収。大澤理事長の健康維持の原動力となっている。【盧載鎭】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー人生70年 国士舘大理事長 大澤英雄」)