ドイツ・ブンデスリーガのドルトムントに所属する日本代表MF香川真司(28)が、年俸の1%をチャリティーとして寄付する「コモン・ゴール」プロジェクトに参加することを表明しました。日本人としても、アジア人としても初めてのことです。イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド時代に同僚だったスペイン代表MFフアン・マタ(29)が今年8月4日に立ち上げたもので、これまでにドイツ代表DFフンメルス(バイエルン・ミュンヘン)やイタリア代表DFキエッリーニ(ユベントス)に、米国女子代表FWモーガン(オーランド・プライド)ら、多くのトップ選手が参加しています。

 寄付金は、世界で120以上の慈善団体とのネットワークを持つ「ストリート・フットボール・ワールド」を通じて分配され、慈善事業に役立てられます。香川は「僕はサッカーのおかげで日本、英国、南アフリカ、ブラジル、そしてドイツをはじめとする多くの国でプレーすることができました。この旅の中で常に僕の目にとまったのは情熱でした。サッカーは、人々に希望と喜びを与える世界唯一のものです。僕が『コモン・ゴール』に強く共感しているのが、この情熱を1つの媒体として、世界の中で恵まれないコミュニティーにいる人々の環境を変えることができるからです」と理由を説明しました。

 マンチェスター・ユナイテッドで14年にマタと一緒にプレーした香川は「個人的に気も合うし、プレーをしていても何か同じ時間を共有できる選手の1人であり、親交も深かった選手の1人です」。公式ブログでは、香川の携帯電話に数カ月前、マタからショートメールが届いたことも明かしました。「あれ? マタからのメール? 久しぶりだな、どうした?」と思って確認すると「一緒に世界の人々のために、ともに活動をしないか? シンジが興味を持ってもらえるなら詳しく話がしたい!」と熱いメッセージがつづられていました。

 「コモン・ゴール」については以前から知っていて興味もあったそうで「僕も何かできないか、シーズンの中断期などタイミングをみて、マタに連絡をしようと思っていた」。そんな時に偶然にも誘いがあり「何というか、こんなタイミングが合うことがあるんだ、と感じましたよ。僕の中では即答でしたね。何か一緒にやらしてくれって!」と一気に賛同に至りました。

 シーズン中のため、まだ2人は会えていないとのことですが、マタからは「シンジは日本人として初めてマンチェスター・ユナイテッドでプレーし、日本人として初めてプレミアリーグ制覇を成し遂げました。だからこそ、彼が日本人の第一人者として『コモン・ゴール』に参加することに意味があるのです。彼をチームに迎えることを、とてもうれしく思っています」と感謝されました。

 活動や寄付金の詳細は今後、詰めていくことになります。あくまで推測になりますが、日本人トップクラスの香川の年俸は、今年7月にドルトムントとの契約を20年まで延長すると発表された際、ドイツ国内で推定500万ユーロ(約6億5000万円)と伝えられています。単純計算で、まず今年は約650万円を寄付するのでしょう。既に多くの普及活動などをしている上に、この金額が上乗せされるのです。いくらトップ選手とはいえ、簡単な決断ではありません。

 また、近年のサッカー界は移籍金や年俸の高騰が話題になっています。今夏、ブラジル代表FWネイマールがバルセロナからパリサンジェルマンに移籍した際は、史上最高額の移籍金2億2200万ユーロ(約289億円)が発生し、年俸は3000万ユーロ(約39億円)の5年契約で合意したと報道されました。もしネイマールも活動の輪に加わり、同じように年俸の1%を寄付すれば年間約3900万円。もちろん仮定の話で、ネイマールも、メッシ(バルセロナ)もクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)も「コモン・ゴール」に参加はしていませんし、参加するのかも分かりませんが、このような取り組みがサッカー界で広がっていけば、一大プロジェクトになるでしょう。香川がマタらと手を取り合って風穴をあけ、続く選手が出てくることに早くも期待せずにはいられません。【木下淳】


 ◆木下淳(きのした・じゅん)1980年(昭55)9月7日、長野県飯田市生まれ。早大4年時にアメフットの甲子園ボウル出場。04年入社。文化社会部、東北総局、整理部を経て13年11月からスポーツ部(現在は東京五輪パラリンピック・スポーツ部)。文化社会部時代は音楽担当として安室奈美恵らを取材。東北総局でモンテディオ山形とベガルタ仙台、昨年まで鹿島アントラーズとリオデジャネイロ五輪代表、今季からFC東京を担当している。