昨季のルヴァン杯と天皇杯の2冠を制したセレッソ大阪に楽しみで、異色な新戦力が加入した。

 この冬、長崎総合科学大付のエースFWとして高校選手権で注目された安藤瑞希、18歳。Jリーグの複数クラブが獲得の興味を示した中で、C大阪にやってきた。初めて練習に合流した日。同じ大分出身のMF清武弘嗣(28)に抱きしめられ「よく来たな~。てっきり○○に行くと思ってたよ~」と大歓迎されたという。

 清武が体で表現した通り「愛されキャラ」だ。高校時代は名将・小嶺忠敏監督(72)が「ゴリちゃん」と呼んだ。その表現がぴたりとはまる風貌だが、本人はいやがることなく「ぜひ、そう呼んでください」とたくましい。

 獲得に尽力したC大阪の大熊清チーム統括部長(53)は「今までのセレッソにいないタイプ。新しい風を吹き込んでくれそう」と言った。どちらかといえば顔も体形もシュッとしたスマートなイメージが強いクラブにあって、ちょっぴりゴツゴツした顔にがっちりした下半身は異質に映る。ただ“見た目”に終わらない。そのプレースタイルも「華麗」より「泥くささ」。ガツガツとボールに食らいつき、貪欲にゴールを狙うスタイルは確かにC大阪に欠けていたものかもしれない。

 安藤は初めて生活する大阪の印象を「怖い」と言った。その理由もおもしろい。「都会だからいろいろ(誘惑も)あるじゃないですか。そっちに気持ちを向けるのは簡単。だから怖いんです。自分はしっかりサッカーだけを頑張りたい」。なかなか聞けない。ぶっとい「自分」という幹が体の中を通っている。

 最初は「怖かったっす」と恐れられていたFW杉本健勇(25)も「安藤、かわいいですよ。力入ってるところや、強さや、18歳らしさ。とにかく練習で力出すんじゃなく、試合に出なあかんし、自分の持っているものは全部、教えていきたい」と師弟関係になった。安藤は「先輩みんなによくしてもらってます」と学びながら、サッカーに打ち込む環境を築いている。

 新入団発表の席で「年齢に関係なく、レギュラーを奪う!」と力強くぶち上げたが、現実はプロの世界でもがいている。ただ、もがきながらも力強く手足を動かし、前に泳ぎ進もうと必死だ。その姿は取材する側も応援したくなる。未来の「ミスターセレッソ」となって花開くか。楽しみなつぼみは大切に育てたい。


 ◆実藤健一(さねふじ・けんいち)1968年(昭43)3月6日、長崎市生まれ。若貴ブームの相撲、ボクシングでは辰吉、徳山、亀田3兄弟らを担当し、星野阪神でも03年優勝を担当。その後いろいろを経て、昨春からスポーツ記者復帰。いきなりC大阪が2冠と自称「持っているやつ」。

C大阪のミニゲームで競り合うFW安藤(左)とDF田中祐(2018年2月8日撮影)
C大阪のミニゲームで競り合うFW安藤(左)とDF田中祐(2018年2月8日撮影)