とても残念な話だ。23日付のイタリア紙コリエレ・デロ・スポルト。元イタリア代表監督のドナドニ氏が来日して、日本サッカー協会と交渉しているという。「何の交渉?」。同紙によると、W杯ロシア大会後の西野監督の後任として、次期日本代表監督就任に向けての交渉らしい。

「森保監督がいるじゃん」。そう思いながらも、サッカー先進国・イタリア大手の新聞報道なので、無視することもできず取材に入った。どうやら、まったくのでたらめで、ドナドニ氏が来日したことだけが事実だった。真相が確認できてから、しばらくすると、少し嫌な気分になった。

私は20年以上、日本代表を取材した。その愛着はかなり重いものがある。「イタリアからしてみれば、しょせん日本はそんなもんか」。西野監督からバトンを引き継ぎ、順調に滑り出したばかりなのに、サッカーに詳しいはずの記者や新聞社の人たちは知らなかった、ということだ。

一国の代表監督の扱いとしては、あまりにも軽すぎる報道だ。W杯ロシア大会中の日本代表監督報道で、あるドイツ人の名前がおどった時期がある。私はその報道は否定しない。各社、一生懸命取材し、多方面から検証した上でそういう結論を出したはずだから。どの人脈をつかまえるかで、スクープにもなり、時には誤報にもなる。

田嶋幸三会長体制2期目に入り、メディアと協会の関係は改善されつつある。同会長は、事実関係をなるべく詳細にメディアに説明している。誠意を感じる。すべてが決まった後(新聞社が欲しがるタイミングよりは大きく遅れるが)だったが、それは立場上、仕方がないことだ。おかげで今後の日本代表のビジョンは理解できるし、監督人選の理由や過程もある程度は共感を持つようになった。

しかし、今回のイタリア発の報道はあまりにも軽すぎた。日本サッカー協会を取材した痕跡もない。そう書いた当コラムの最後になって、私の重大なミスに気づいた。今回の誤報は「コリエレ・デロ・スポルト」ではなく「ガゼッタ・デロ・スポルト」だった。

まぁ私にとってはコリエレでもガゼッタでも、どちらでもいい話なのだが…。【盧載鎭】

◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。88年来日し、96年入社。加茂ジャパンから日本代表を担当。最近、BTS(防弾少年団)の音楽をよく聞く。というのは、長女と次女が、いつも家で流しているため、耳に入ってくる。