京都橘サッカー部は01年に創部。京都の名門としてインターハイに5度、全国高校サッカー選手権に9度出場している。創部当初から京都橘を急速に成長させた米沢一成監督(46)は、人間形成も含めた指導を行っている。

これまで、17年に京都サンガF.C.へ加入したFW岩崎悠人(22、現ジェフ千葉)や、今季から徳島ヴォルティスに加入したFW西野太陽(18)など、多くのJリーガーを輩出している。

20年度の全国高校サッカー選手権では2回戦(1月2日、駒場)で昌平(埼玉)に0-2で敗戦。3年生の引退後、米沢監督が新たに主将に指名したのは、静かで淡々と練習をこなす、おとなしい性格のFW木原励(2年)だ。木原は、選手権で優秀選手に選出されており、卒業後はプロ入りを目指している。

米沢監督は「チームを背負うのが、今の(木原)励に一番必要なこと。乗り越えないとプロとしてやっていけない」と話す。木原は2年生の4月から副主将を任され、主将になるまでの準備期間を与えられていたが、3年生に頼りきりだった。現在も主将として試行錯誤を続ける木原を、同監督は「困らせなあかん。困らせないと改善しようとしないから。いろいろな意味で強くならないとね」と見守っている。

「プロになるということは、個人事業主になるということ。『自分』という商品をアピールして買ってもらわないといけない」。簡単ではないプロの世界。そこで通用する「一流」へと選手を育てるため、精神面も鍛える。

木原は、富士ゼロックス杯(20日)の前座として行われる川崎フロンターレのU-18と試合を行う高校選抜メンバーに選ばれていた。新型コロナウイルスの影響もあり、結局は辞退したが、Jリーグのクラブからキャンプ参加の打診も受けていたと明かし、米沢監督の下で成長を遂げれば、憧れのプロとの正式契約も夢ではない。

そんな木原の今年の目標は「京都3冠」。新人戦は中止になってしまい「みんな人生を懸けてサッカーをやっているので、試合はあってほしい」。胸中を吐露し、インターハイ予選、選手権予選では優勝を目指す。木原は主将として全国優勝を目標に、人間的にも大きく飛躍する年にする。【佐藤あすみ】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

20年12月31日、全国高校サッカー選手権の松本国際戦に出場した京都橘FW木原励
20年12月31日、全国高校サッカー選手権の松本国際戦に出場した京都橘FW木原励