「ジャンボの愛称で知られ、神奈川県1部FIFTY CLUBのFW大久保哲哉(43)が、公式戦17試合出場で12得点5アシストの結果を残し今季を終えた。「結果が求められているポジションなので、数字が必要。そこを意識しながらプレーしていた。そういう意味ではいいシーズンだった」と振り返った。

大久保がJ1から数えて7番目のカテゴリーであるFIFTY CLUBに所属して今季が5年目だ。1年目の19年は18得点で得点王。20年も8試合9得点で得点王。21年は8得点(2位)、22年も6得点(2位)とコンスタントに結果を残している。Jリーグから数多くの選手が地域リーグに移籍しているが、公式戦も練習場も人工芝という環境の変化の中、大きな負傷もなく結果を残し続けるのは容易ではない。

12月の初旬、今季の最後の練習にお邪魔した。チームではもちろん最年長。ゲーム形式の練習では、率先してプレスのスイッチを入れ、プレスの連動の声かけも目立っていた。GKからのロングフィードが頭上を越えたときは「(自分の)胸を狙ってくれればOKだから」と、コーチのような口調で指導する風景もあった。

居残り練習では、21歳のMF中野龍斗とシュート練習。中野のクロスをゴール前で点で合わせる練習を繰り返していた。元Jリーガーではあるが、自らその壁を取り払いチームに溶け込んでいる。

大久保は言う。「コミュニケーションは、チームがいい雰囲気になるように言わないといけない。それは心がけるようにしています。感情的になるシーンもありますが、そのままの勢いで思ったことを言葉にすると、若手は萎縮してしまう。うちのチームには18歳、20歳の選手もいる。若手には伸び伸びやってもらえる方がいいので」。

大久保は19年にA級コーチのライセンスも取得し、三浦学苑高校(神奈川)のサッカー部のテクニカルアドバイザーとして指導にも当たっている。ライセンスの講習では、自身の考えの言語化や、相手に伝えることの重要性も学んだ。現チームでの立ち居振る舞いについて、大久保は「指導者講習や高校生の指導の経験も今に生きてると思う」と話す。

ただ、ストライカーとして得点へのギラギラした思いは変わらない。だからこそ「こういうボールが欲しい」と日々の練習から要求は言い続ける。「自分がドリブルして1人で点を決めるタイプではないので。周囲に生かしてもらってる」。居残り練習で大久保とコンビを組む中野は、大久保へ今季、5アシストをマークした。「こういうボールが欲しいと言い続けて、チームメートが分かっているからこそ、数字が残っていると思う。結局、練習しないとダメですよね」。

Jリーガーのプライドはあるが、それは内に秘め、あくまでもチームのために考えて言動に移している。だからこそ、神奈川県1部で5年連続、結果を残せているのだろう。

FIFTY CLUBの角野隆監督も「決められたこと、与えられたことで表現する能力は非常に高い。社会適応能力が高いことも、(プロとして)長生きしている秘訣(ひけつ)だと思います。仲間ともいい言葉を掛け合いながらやっていて大人ですよ」と、大久保を評価する。

来季は44歳になる。もちろん、現役続行への気持ちは強い。「結果を残せている限りやれると思っている。やり続けることが大事。まだ若い選手には負けられない」。

今季は夏に練習で左膝を一度痛めたが、試合の欠場はなかった。このほど行われた中村俊輔氏の引退試合にも出場。ユニホームを脱ぐ同年代の仲間がいる中で、より、現役へのこだわりが芽生えた。昨年12月に他界した父も、できる限り長く現役を続けることを望んでいた。チームの和を重んじ、勝利と得点には貪欲-。来季もギラギラした思いを胸に、ジャンボの挑戦が始まる。【岩田千代巳】


○…FIFTY CLUBは地域リーグから関東2部昇格を目指す「関東社会人サッカー大会」で今年もPK戦の末で敗れ、昇格を逃した。今年で4回目の挑戦だったが、なかなか昇格の壁を破れずにいる。来季は、昇格を目指す同大会が地元の神奈川開催。角野監督は「来年は勝負の年」と位置付け「来季はリーグ戦は18試合。全部勝ちきれる選手層を求め、練習を含めてやっていかないと」と“5度目の正直”を目指し昇格をつかみに行く。