徳島ヴォルティスが14年以来、4年ぶりのJ1復帰に向け好調だ。堅守と、的確なパス回しから効率よく前線に仕掛ける攻撃で、自動昇格圏の2位アビスパ福岡と勝ち点差6の3位。得点は22チーム中2位タイの38で、FW渡大生(24)は得点ランク2位の14ゴールを決めている。

 好調なチームを後押しするサポーターの応援にも、変化が見られる。以前は、一部のサポーターが審判の判定や相手チームの選手に対し、挑発的な言動をする場面が見られたが、今はゴール裏のサポーターが声を1つに声援を送り、過激な言動などは減った。

 4月29日のジェフユナイテッド千葉戦の出来事が始まりだった。前半14分、DF馬渡和彰がボールボーイに乱暴な振る舞いをして1発退場となった判定に激怒したサポーターが、暴言や挑発的な態度を見せた。さらに1人のサポーターが試合後、ボールボーイにアルコール飲料をかけた。徳島は5月2日に当該サポーターに公式戦の無期限入場禁止の処分を下した。翌3日の会見では鳴り物と拡声器を使った応援を一時、控えるようサポーターに申し出たこと、サポーター団体の明確化を提案したと明らかにした。

 背景には、サポーター団体をクラブが把握し切れていないことが一連の問題につながったという反省があった。かつて対戦チームやサポーターに挑発を繰り返す団体を解散させたが、有志が個人で応援しているという主張の元、一部のメンバーがスタンドで過激な応援を継続した。そこにメスを入れることしか、改善の道はないと判断した。

 徳島はサポーターとの話し合いを地道に続け、問題発生から2カ月がたった7月7日、声明を発表した。

 <1>Jリーグ試合運営管理規定第4条(持ち込み禁止物)を今まで以上に遵守するなど、クラブ側の条件を理解した団体をサポーター団体として登録することを決め、3団体から団体登録用紙が提出された。

 <2>団体の代表者が拡声器、鳴り物の使用者を届け出た上で応援の先導をする。

 発表を受け、翌8日の名古屋グランパス戦から拡声器や鳴り物を使った応援が再開された。ゴール裏からは、黒いTシャツを着て、最前列で暴言を連呼するサポーターは減り、サポーターの着るユニホームと横断幕の藍色に染まるなど、目に見える変化があった。

 岸田一宏社長は「団体を明確に捉えていないところに甘さがあり、サポーターにアプローチをかけにくかった。関係をより良くするための話し合いを話し合いを毎週、何回も繰り返しました。サポーターも非常に反省し、もう1度あらためないといけない部分があると考えていることは受け止めました」と振り返った。

 サポーターも、変化を感じている。徳島在住で12年、応援を続ける20代の男性は「応援の時に選手を後押ししようという気持ちが強くなりました。あの出来事以降、ちゃんとやらないと、という気持ちはサポーターにもある。クラブとの関係ということは、今まであまり考えてこなかったけれど、前よりコミュニケーションは取れている。徳島は人生の1つ…大事です」と前向きに捉えた。

 渡は、選手としてプレーに集中しているという前提の上で「サポーターとはお互い、ウィン、ウィンの関係で、ポジティブにまとまってやれれば。J1に昇格し、いろいろな人を幸せにしたい」と期待した。

 徳島は目をそらしてきた現実、課題と向き合い1歩1歩、前進している。岸田社長は「サポーターとの距離が近くなり、コミュニケーションが取れるようになった結果(応援は)良くなっている。歩み寄りがチームの成績にも良い影響を与えていると思う。サポーターとの関係を良くしていくことに終わりはない…積み重ねです」と、今後もサポーターと向き合い続けることを誓った。【村上幸将】