北海道コンサドーレ札幌は鹿島アントラーズに0-0のスコアレスドローで、過去リーグ6戦全敗だった敵地で初めて引き分けに持ち込んだ。試合序盤からパスがつながり、運動量で圧倒。何度も好機を演出したが、決定力に欠け、得点を奪えなかった。終わってみればシュート数も同じ12本。ミハイロ・ペトロビッチ監督(60)が掲げる攻撃的サッカーの浸透ぶりをピッチで発揮し、難敵から勝ち点1を奪った。

 札幌が難敵、鹿島と互角に戦った。だからこそ試合後の選手の表情には、勝利には、わずかに届かなかった悔しさがにじんだ。手応えはあった。駆けつけたサポーターから拍手も送られた。ペトロビッチ監督は「今日のゲームの内容は出来過ぎなくらい」と満足げだった。

 立ち上がりから攻めた。キックオフから、わずか10秒ほど。1トップでリーグ戦初先発のFW都倉がゴール前に切り込み、シュートを放った。クロスバーに阻まれた「一撃」が、チームの勢いを加速させた。昨季は敵地で前半に3失点し、0-3で完敗している。そんな過去との違いを予感させるには十分だった。「昨年悔しい負け方をしたなかで、自分たちの成長や力を見せられた」。キャンプから取り組む新しい戦術に必死に順応しながら、控えに甘んじてきた都倉の思いがつまった速攻だった。

 前半はシュート数9本と5本の鹿島を圧倒した。最終的には12本で並んだが、CKは相手の倍以上の10本。過去未勝利の敵地で押し込んでいたのは札幌だった。パスでつないでスペースを生み出す、ペトロビッチ監督が理想とする攻撃的サッカー。鹿島のボランチは最終ラインに釘付けになった。指揮官は「チームづくりを初めて2カ月。これだけ選手が見せてくれたのは驚いている」とうなずいた。

 不運な判定もあった。後半17分、ペナルティエリア内でMF三好のシュートが、鹿島DF昌子の手に当たった。PKなら、勝敗は変わっていたかもしれない。ペトロビッチ監督は「試合後レフェリーから『あれはハンドだった』と認められた」と明かしたが、日本代表遠征帰りのDF植田、昌子らの堅守に阻まれ、決定的な場面で決めきれなかったのも事実だった。

 “ミシャファミリー”の結束力は日増しに高まっている。鹿島戦前の3月24日には、札幌市内で急きょ監督主催の決起集会が開催された。この日つかんだ勝ち点は3ではなく1だったが、W杯中断期間前まで続く15連戦初戦で、難敵から敵地でつかんだことに意味がある。【保坂果那】