鹿島アントラーズが3-3で水原(韓国)と引き分けて、1勝1分けでクラブ史上初の決勝進出を決めた。第1戦を3-2で先勝して迎えた敵地決戦。1-0の後半に立て続けに3失点したが、19分にDF西大伍のゴールで2戦合計でタイに戻すと、37分にMFセルジーニョのJリーグ勢3人目の“ACL4戦連発弾”でひっくり返した。20冠目を懸けた悲願のACL制覇へ、決勝ではペルセポリス(イラン)と11月3日にホーム、10日にアウェーで対戦する。

何というたくましさか。激闘の末に、悲願のアジア制覇への挑戦権を手にした。鹿島が死闘を制した。

先制しながら後半7分から、わずか1分で2失点。水原の勢いにのみ込まれ、同15分に3点目も失った。絶望も感じさせた立て続けの3失点。だが、直後に自然とほぼ全員が集まった1つの円陣で心を整えた。「1点取れば同点だから」。

監督の指示を聞く時間はない。戦法を変えて空中戦できた相手にはボランチの三竿健をカバーに回すことで修正した。「みんな、まあまあテンパってましたね」と笑った西がその4分後に、2戦合計で同点とするゴールを決めた。下を向かず失わない闘志が、セルジーニョの“決勝弾”も呼び込んだ。大岩監督は「選手がまたひと回り、ここで大きくなった。一体感が相手を上回った」とたたえた。

試合開始から闘った。韓国出身GKクォン・スンテは第1戦後に笑って言った。「うちの選手に言いたい。『オレがこんだけ言われているから、その分頑張ってくれ』と」。ホームですら罵声を浴び、警告を受けた“頭突き”は韓国で物議に。この日はボールを持てば大ブーイングが起こった。FW鈴木は「頭突きは許されることではないが、あのプレーを無駄にしない戦いをしようと、みんなで話した」。体を張ったクォンの闘志が全員に波及した。

2月14日のACL初戦から253日間で計49試合。5日に1試合のペースで駆け抜けてきた。選手が全員そろったことは1度もない。人が足りず、スタッフが3人加わることもあった。

それでも誰一人“言い訳”にしたことはない。チームに浸透する最年長、小笠原の言葉。「連戦だからって言い訳はしない。それで勝ってこそ価値がある」。

4つの大会に挑み、ルヴァン杯とJリーグは可能性を失った。だが、ACLは残った。8月に来日したジーコTDは選手へ「このチームは全て1位じゃないと意味がない」と言った。その悲願が、目前に迫った。【今村健人】