湘南ベルマーレの曹貴裁監督(49)は、横浜F・マリノスを破って初優勝した監督会見で、2-0で勝った5月16日の1次リーグV・ファーレン長崎戦と、3-0で勝った6月2日のプレーオフステージ・ベガルタ仙台戦の2戦を終えた段階で「優勝までいけるんじゃないかという予感があった」と語った。

曹監督は会見の冒頭で「埼玉スタジアムで決勝を戦うのは、個人としてもチームとしても初めて。J1の試合では、いつも様子を見て、相手にボールを渡してから守備をするという戦いが多かったが、自分たちでタマゴを扱うかのように、しっかり相手陣内に入れてチャンスを作ってくれたところに、成長を感じた」と、先制した前半を評価した。

その上で「逆に前半が良すぎて、後半がきついなと思ったけれど“湘南スタイル”という縦に速いばかりではなく、左右にしっかり体を張って相手のシュートをブロックする、原則的なものを、今日、出た選手が出ていない選手と切磋琢磨(せっさたくま)し、ピッチの中の温度を下げないでくれた。選別しないでやったことが、こういう結果につながった」と語った。

曹監督は、4月に連結子会社となったフィットネスクラブ運営のRIZAP(ライザップ)グループの支援についても言及。「ライザップさんが経営に参画し、一緒に頑張ろうとメッセージを送ってくれ、目に見えないところ、選手の食事のサポートなどをしてくださった。ライザップの方にもおめでとうと言いたいですし、緑のサポーターに少しは良い思いさせられたかな」とライザップとサポーターに感謝した。

ライザップグループの子会社になることを発表した会見では「2020年までにJ1、天皇杯、ルヴァン杯いずれかの獲得、収容率ナンバー1、満員のスタジアムという結果をコミットします」という宣言がなされた。1年目でタイトルを獲得し、文字通り「結果にコミット」したが、質疑応答では、こんなに早く実現できると思ったか? と質問が出た。曹監督は「ミッションとか目的がチームにはないといけない。そこに向かっていくのは間違いないけれど、この大会で優勝しようといって入ったわけではない」と語った。

その上で「予選(1次リーグ)で30人以上のメンバーを使い、彼らがどう伸びて、勝っていくかに気を配った。V・ファーレン長崎戦とベガルタ仙台戦に勝った時、優勝までいけるんじゃないかという予感…ちょっと思っていました。それはギャンブルということじゃない。選手が、すごく自信を持ったなとここ1カ月で感じた。むしろ、俺が邪魔しちゃいけないなという感じでした」と語った。そして「今日も『絶対に優勝しようという気持ちでピッチに立とう』と選手に言って、立ち上がりから非常に堂々とプレーしてくれた」と選手をたたえた。

優勝した次の瞬間はピッチに突っ伏して泣いた。その時の思いについて聞かれると「優勝しても絶対に泣かないと決めていた。そういうつもりは全然なくて。クラブ全体で、これだけのお客さんの前でプレーするのは当たり前じゃなかったし、何度も俺はポキポキと折れていた…そのことを思い出した。ホッとしたなでも良かったなでもなく、ギリギリの中でやってきたことが、選手が報われて良かった」と心中を明かした。その上で「(ピッチに)寝ていても誰も来ないから、ちょっと起きないとなと思った。それくらい冷静ではあった」と言い、笑った。

曹監督は会見場の机の上に、大会冠スポンサー・ルヴァンのお菓子が置いてあるのを見つめた。現在、ライザップグループの指導の下、自身もトレーニングメニューをこなしており「糖質制限をしているので、全く食べられないんですけど、薄味チップスとビスケットは少し食べようと思います」と言い、報道陣を笑わせた。【村上幸将】