川崎Fが2連覇を成し遂げた。アウェーでC大阪に1-2で破れたものの、2位広島も黒星を喫したため、2試合を残して優勝を決めた。連覇はV川崎(現東京V)、横浜、鹿島、広島に次いで5クラブ目となった。今季は自慢の攻撃力に加え、守備もリーグ最少失点と安定。一時は広島に最大で勝ち点差13をつけられたが、第28節で首位に立つと、一気に頂点まで駆け上がった。

川崎FがJ1・18チームの頂点に立った。試合は終了間際の失点で敗れたが、ライバルの2位広島も仙台に黒星を喫したため、優勝が決まった。92年のJリーグ発足時に加盟した10クラブ「オリジナル10」以外では初の連覇となった。

今季は、富士ゼロックス・スーパー杯、ACLで3連敗を喫してのスタートだった。リーグ開幕戦の磐田戦は白星を挙げたが、3月31日の広島戦で黒星を喫し、そこから公式戦6戦未勝利と長いトンネルも経験した。5月には15年10月以来、2年半ぶりの連敗を喫し、首位広島との勝ち点差は最大の「13」にまで開いた。

だが、鬼木達監督(44)もイレブンも動じなかった。MF阿部浩之(29)は「2年半ぶりの連敗って、逆にすごいことでしょ。そんなチームがレアなんですよ」とサラリと話し、MF中村憲剛(38)も「連敗してしまったものは仕方がない。切り替えてトレーニングするだけ」と敗戦を引きずることはなかった。選手全員が昨季の逆転優勝の経験から「首位を見るのでなく、1戦ごとに勝ち点3を積み重ねなければ何も始まらない」と分かっていた。ボールを失ったら激しい球際と速い攻守の切り替えで奪い返し、ボールを握り倒して攻める。昨季、初優勝を遂げた「勝利の方程式」を貫いた。

連敗直後の5月12日のアウェー柏戦は、鬼木監督が「ターニングポイント」として挙げる一戦だ。今季、J2山形から加入したMF鈴木雄斗(25)が途中出場でJ1デビューし、ロスタイムの劇的勝ち越し弾を決めて勝利。伏兵が活躍しての白星に、鬼木監督は「ここで負ければ一気にチームも自信をなくす瞬間だったと思う。そのタイミングでラルフ(鈴木)が入って4分で仕事をして。普段、出られない選手も、やればチャンスがある、と士気が上がる瞬間だった」と振り返る。

今季は始動前のキャンプで、主将のFW小林悠(31)が「常勝軍団にしていこう」との決意を口にし、副主将の大島僚太(25)が「チームが強くなる上では、年齢関係なく、厳しく求め合うこと。試合に出る人、出ない人がいますけど、出ていない選手が出ている選手を食うではないですが、去年以上に激しく厳しい練習をしていきたい」と所信を表明し、チームに活気を与えた。FW斎藤学(28)、大久保嘉人(36)が加入。大久保とMFエドゥアルド・ネット(30)は夏に移籍してきたが、選手層が厚くなったことで生まれた激烈な競争が、チームの底上げにつながった。

日々の練習では、風間八宏前監督(現名古屋監督)がしみ込ませた「蹴る・止める」の技術、鬼木監督が植え付けた「観客を魅了する激しい守備」の両輪を磨いていった。鬼木監督は現役時代、常勝軍団の鹿島でプレーし「うまいだけじゃ勝てない」と感じたことを明かし「鹿島は、うまい選手が、しっかり守備もし、下手な自分よりハードワークする。うまい選手がやれば、鬼に金棒で強くなるのが当たり前。そこを言い続けた」。うまい選手でも守備をサボればピッチに立てない環境をつくりだした。

W杯ロシア大会中断明けの7月からは、11勝3分け3敗と強さを発揮。DF谷口彰悟(27)は「細かい部分で、守備でもう1歩寄せる、もう2、3メートルダッシュするとか、切り替えの速さ、戻るスピードと、当たり前にやるべきことをどれだけ高いレベルでできるかに帰り着いた」と振り返る。今季は第32節終了時で得点がリーグ2位の53点、失点も同最少の26点とさらにチームを強くした。

97年にJFL参入から21年。J1の舞台で9度の準優勝の経験から「シルバーコレクター」と言われていたが、昨年のリーグ最終節に劇的な逆転優勝を果たし「勝負弱さ」を返上した。そして、連覇。うまさと強さを兼ね備えた川崎Fが、常勝軍団への道を歩き始めた。【岩田千代巳】

 

◆川崎フロンターレ 前身は1955年創部の富士通サッカー部。97年にJリーグを目指してプロ化し、川崎フロンターレに改称した。99年にJ2で優勝してJ1初昇格を果たすが、1年でJ2へ降格。地域密着の経営方針に転換し、再昇格した05年以降はJ1に定着した。フロンターレはイタリア語で「正面の」などを意味し、常に最前線で挑戦し続け、正面から正々堂々と戦う姿勢を示す。本拠地は川崎市等々力陸上競技場。