男泣きした。目頭を何度も押さえる。鹿島アントラーズ悲願のアジアチャンピオンズリーグ制覇。その現実に、大岩剛監督の目から涙がこぼれ落ちた。「非常に厳しいアウェーの試合でしたが、選手がよく走り、戦い抜いて…。勝利はできなかったが、優勝できて非常にうれしく思います」と喜びを口にした。

10万人の大観衆が鳴らすブブゼラが耳をつんざき、声が全く通らない。大岩監督の声はかすれていた。質問で、「今季ACLを戦った中でどのチームが最も強敵だったか」と聞かれると「それはお世辞抜きに、ペルセポリスだったと感じています。チームもそうですし、この大観衆のアウェー、戦いというものは本当に非常に厳しかった。昨日も言いましたが、今季のACLで初めてこのアザディ競技場でペルセポリスに勝ちたかった、勝利をしたかったが、非常に苦しめられて、引き分け止まりでしたけど、非常に敬意を表しています」と素直に打ち明けた。

今季は前半戦にリズムに乗れず、けが人も多く出て苦しんだ。ワールドカップ(W杯)中断明けから巻き返したが、結局、リーグ戦とルヴァン杯のタイトルを失った。それでも、常勝軍団の鹿島が唯一、手にしていなかったACLのタイトルを手にした。「このACLというタイトルはクラブも、選手も、サポーターにも悲願だったと思いますし、これを取ったことで、鹿島アントラーズという名前が、アジアに向けて発信されるんじゃないかと思っています。一昨年、クラブW杯でレアル・マドリードと戦った決勝を上回る価値のあるタイトルだと思っています」と話した。

表彰式の前、選手から水シャワーをかけられ、その後にMF小笠原満男と抱き合った。39歳のベテランをベンチに置く時間が増えたが、常にコミュニケーションを取り、対話を重ねてきた。信頼していることを、何度も伝えてきた。だから、お互いが固く、抱き合い続けた。「個人的に彼とは現役選手としてプレーしていたので、僕自身も彼に対して特別な感情がありますし、曽ケ端も含めてですけど、彼らとACLのアジアタイトルを取り切れたことが、個人的にですけど非常にうれしく思っています」。

会見の質問が打ち切られた後、大岩監督は自らこう言った。「最後に一言いいですか。イランに来て、非常に素晴らしいもてなしを受けて感謝しています。ホテルでもそうですし、移動のバス、スタジアムのセキュリティーをしてくれた皆さん、メディアの皆さん、非常にリスペクトしてくれたと思うので、非常に感謝しています。ありがとうございます」。まじめで周囲に気を配れる、大岩節そのものだった。