横浜F・マリノスは8日、元日本代表DF中沢佑二選手(40)の現役引退を発表した。昨年8月に左膝痛などの影響で、治療に専念するも思うように回復しなかった。日本代表としてワールドカップ(W杯)06年ドイツ大会と10年南アフリカ大会に出場し、歴代6位タイの国際Aマッチ110試合に出場した鉄人がスパイクを脱ぐ。

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たった2年の横浜担当だったが、あれほどまでにすべてをなげうってサッカーに取り組むJリーガーは初めて見た。14年初戦のゼロックス杯で完敗。翌日の練習に、いつもの車ではなく徒歩でやって来た。リュックサックを背負い、しゃれた横浜のみなとみらい地区を歩いて帰るボンバーをしつこく追い掛け、男2人で散歩。「昨日はあんな試合だったし、気分転換も兼ねてです。車だとああだこうだと考えてしまって危ないかもと思って」と理由を教えてくれた。

驚くこちらに「AB型は変わった人が多いんですよ。ナラさん(楢崎)も本田(圭佑)もそうでしょ?」。思わず納得。日本代表に今も引き継がれ、良き伝統となっているオフの唯一のリフレッシュ「散歩隊」創設者の1人でもあった。

Jリーグ、試合後の帰りも、他の選手より1時間近く遅い。1人だけ、コンディション維持で温冷交代浴をしているから。誰もいなくなった取材エリアで話を聞くのが日課だった。ベスト16まで進んだ10年南アフリカ大会。PK戦で敗れ、戦いを終えた宿舎でごく数人の選手で飲んだ。相棒の闘莉王らが、アルコールを解禁し口にしたが、中沢はかたくなにカフェオレしか口にしなかったというのは有名な話。徹底した節制のプロのかがみ。息抜きは、大ファンと公言していた安室奈美恵さんのパフォーマンスだけだったか。その安室さんを追うように、真のスターが舞台を去る。お疲れさまでした。【八反誠】