東京オリンピック(五輪)世代の慶南MF邦本宜裕(たかひろ=21)が日本の地で輝きを放った。

右クロスを膝で合わせて決勝点をマークし、昨季アジア王者から金星を勝ち取った。五輪代表監督を兼任する森保一日本代表監督の目に、その姿をしっかりと焼き付けた。

存在感は一級品だった。邦本は両チーム最多4本のシュートを放ち、前に後ろに走り回った。スコアレスで迎えた後半18分、MFマッチの右クロスがGKの頭上を越えるのを見てファーサイドに走り込み、左足で合わせた。1-0とチームのACL初勝利の立役者となった男は「取りえはサッカーしかないので、支えてくれた人に恩返しをしたい」と頬を緩めた。

15年から福岡でプレーしていたが、契約違反などで17年途中に退団。18年から拠点を韓国に移した。「普通じゃ味わえない経験をたくさんさせてもらっている。ここまで来られたのは1人の力じゃない」。異国の地で再起を図り、チームのためにプレーする献身性を身につけた。

97年生まれの東京五輪世代。五輪は「意識していなかった」というが、もともと五輪代表やA代表は自身の夢だった。視察に訪れた森保監督が自身についてコメントしたと聞くと、「少しでも『こういう選手がいるんだな』と思ってもらえたらうれしい」と微笑んだ。韓国で鍛錬を重ねる21歳が、東京五輪代表のダークホースに名乗りを上げた。【杉山理紗】