元アーセナル監督のアーセン・ベンゲル氏(70)が24日、東京・渋谷のヨシモト∞ホールで講演会に出席し、ゲストとして登壇した元日本代表監督の岡田武史氏(63)と対談した。

ベンゲル氏と岡田氏は旧知の仲だといい、岡田氏は「昔は出会った時にあいさつするぐらい。でも(日本の)監督をしてた10年の南アフリカW杯前にアドバイスをもらったりして、そこから」と明かした。

岡田氏はその、自身が指揮したW杯でのベンゲル氏とのある約束について語った。「10年のW杯前に欧州の選手を見て回っている時に、アーセナルの練習場に行ったことがあって」と切り出し「そこでお茶をした時にベンゲルが『この(1次リーグの)グループを突破できるわけないだろう。セットプレーでドン(得点)されて終わりだよ。もし突破したら東京に俺がスタッチュー(像)を建ててやる』って言ったんですよ」と話した。その10年W杯では日本はオランダ、デンマーク、カメルーンと同じE組に入り、初戦のカメルーン、第3戦のデンマークに勝利。オランダには敗れたものの、前評判を覆して2勝1敗の2位で決勝トーナメントに進出した。

ベンゲル氏はこの岡田氏との約束を忘れていた様子で、あらためて約束の“執行”を求められると「今はクレジットカードを忘れちゃったから」と笑いを誘ってかわしていた。

対談では若手選手の育成にも話題が及んだ。岡田氏は現在、指導者からは退き、FC今治の会長などを務めながら選手育成に励んでいる。岡田氏は日本選手の指導について主体性を持たせることの重要性を語り「なんとか自立した選手を育てることが課題。それを今治でやろうとしている」と話した。ベンゲルは日本選手については「チームを1人の人間だと例えてみると、最後の1歩を踏み出すときの自信が足りないのではないかと思います」と指摘。そのためには精神的な強さが重要だといい「どんなプレッシャーの中でもいけるという自己肯定感を持つこと。成功を糧に、その一歩を踏み出せる勇気や力だったり、恐怖に打ち勝てる自分でいることが大事だと思います。そして負けないために俯瞰(ふかん)して物事をみて、問題点を改善していくことです」と語った。

ベンゲル氏は95年に名古屋監督を退任後、アーセナルを96年から18年まで約23年間に渡って指揮。9月22日に吉本興業とのマネジメント契約を発表した関係もあり、今回の来日が実現していた。

この日の講演は2部制で行われ、第1部ではFC東京の大金直樹社長と、東京ヴェルディの羽生英之社長がゲストとして出席。岡田氏は第2部から登場した。