FC東京がアウェーで大分トリニータに2-0で快勝した。得失点差で2位も首位鹿島アントラーズに勝ち点59で並んだ。開始からわずか7分間で2得点。東京五輪世代のDF渡辺剛(22)が得意のヘディングで追加点を挙げた。本職の守備でも無失点に貢献。下部組織出身ながら順風満帆とはいかなかった男が、クラブの悲願であるリーグ初優勝へ近づく勝利に大きく貢献した。優勝争いは勝ち点58の3位横浜を含め三つ巴の大混戦となった。

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長所を存分に見せる渡辺の1発だった。前半5分に永井が先制したわずか2分後の左CK。MF三田のキックに頭1つ抜け出して得意のヘッド。DFに完全に競り勝ち、後方に流すようにゴール右へ決めた。「練習から確認していた通り。(三田が)いいボールをくれた」。鮮やかな速攻で試合を決めた。

東京五輪世代の有望株。中学時代から毎日、練習場の片隅に吊されたボールに向かって跳んでヘディングを武器にした。中大時代は練習に欠かさず筋トレを追加。「やらないと寝られなくなった」という積み上げでスクワットは40キロから150キロ、ベンチプレスも40キロから110キロまで増えた。東京の下部組織出身ながらユースに昇格できなかったが、大きく進化して帰還した。

優勝を争う東京で主力の座を勝ち取ると、さらなるステップアップがあった。10月には東京五輪世代のU22(22歳以下)日本代表に選出。世代別も含め、自身初の日の丸だった。遠征先のブラジルで同国代表と対戦し、スペイン1部RマドリードのFWロドリゴらと対峙(たいじ)した。「東京でスタメンをとったことも、代表に入ったことも、誰も想像していなかったと思う。大学までのことが報われた」。加入1年目の今季、大きく飛躍した。

目標とする東京五輪、その前にクラブの悲願であるリーグ初制覇がある。「チームを優勝させたいと思ってここにきた」。攻めては得点、守っては無失点。若く頼もしいCBが、東京のVロードを支えている。【岡崎悠利】