横浜F・マリノスが2位FC東京との優勝を争う直接対決となった最終節で、04年以来15年ぶり4度目の優勝を決めた。就任2年目のアンジェ・ポステコグルー監督(54)のもと、ボールも人も動く攻撃的サッカーで頂点に立った。今季から拡大された外国人枠も有効活用してチーム力を上積みし、トリコロールの名門が復活を遂げた。

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ついに横浜が15年ぶりの頂点に立った。初のJリーグ年間王者に輝いた95年にはDF井原正巳、連覇を果たした03、04年時にはDF中沢佑二ら日本代表でも主力となる守備陣が最終ラインにどっしり構えていた。“堅守”が長くチームの土台となっていた。しかし、オーストラリア代表を率いW杯アジア最終予選で日本と戦ったこともあるオーストラリア人のポステコグルー監督が昨季就任。スタイルが一変した。

失点も恐れずアグレッシブに攻めるようになり、昨季は12位だったが、リーグ2位タイの56得点を記録した。一方、失点は下から2番目の56点と守備面に大きな課題を残していた。今季は失点を減らしつつ、前節までリーグ最多65得点で首位に立ち、圧倒的に優位な立場で最終節を迎えていた。指揮官は攻撃面の充実を実感し、今季は「失点しても奪い返せる。信念を持ってやっていた」と繰り返した。

クラブの姿勢もブレなかった。14年から提携する英マンチェスター・シティーなどを持つシティー・フットボール・グループ(CFG)の情報網などを利用し、指揮官の要望に合わせた選手を積極的に補強した。今季から登録できる外国人枠が無制限となり、1試合の出場人数も3人から5人に拡大した。ブラジル人を中心に8人の外国人と契約し、試合にはJリーグ提携国枠のタイ代表DFティーラトンを含む外国人6人を積極起用。日本人と助っ人外国人をうまく融合させ、盤石な布陣を作り上げた。

実に5カ国の選手が交ざり合う多国籍チームとなったが、一体感が崩れることはなかった。出場機会の多くない年長選手らも練習から妥協を許さず、準備を怠らない姿勢を若手に背中で伝えた。戦術の浸透とともに競争も増した。MF大津は「腐っている選手は1人もいなかった。試合に出ている人も、そうでない人も、お互い助け合ってリスペクトする。僕のキャリアの中では今までなかった光景だった」と話した。一気に攻撃的なスタイルにかじを切り、姿を変えた名門が、15年ぶりの栄冠をつかみとった。