全国高校サッカー選手権が30日から開幕する。令和の初代王者を決める今大会。日刊スポーツでは「新時代 令和の初代王者へ」と題して開幕までは独特の強化法で勝ち上がった3校を取り上げて連載する。第1回は公立の東久留米総合(東京A)。都が指定した強化特別校で、全校生徒の8割以上がサッカー部で部員数は200人を超える。公立校らしく文武両道を貫き、8年ぶりの出場を決めた。

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今年は約230人で始動した。公立校としては異例の部員数。推薦もなく、毎年約90人が入部する。1学年の男子生徒のうち8割以上がサッカー部員。Jクラブの下部組織出身といったエリート選手はいない。

加藤悠監督(34)は「“なんとなく高校でもサッカーがしたい”とか、親に“都立に進むように”言われたとか。生徒はいろんな背景を持っています」と説明する。過去にはバスケットボール部から転部した生徒もいた。公立とはいえ、サッカー部への敷居が低い。それもまた、部員が増える文化を作っている。

もともとは川崎フロンターレのMF中村憲剛を輩出した東久留米高で、07年に清瀬東高と合併。都立の強豪として15年に教育委員会からサッカーの強化特別校に指定された。強化費で毎年合宿を行い、外部指導者も招く。

強豪校だが、公立らしく根底にあるのは文武両道。練習時間は午後3時40分から6時と約2時間に限定。授業や通信制を持つ関係で、それ以外の時間は練習場もトレーニングルームも使えない。また定期テストで赤点を取れば、主力選手でもベンチから外される。

加藤監督は「文武両道は大変だし、面倒かもしれない。だが自分に負荷をかけられない人間はピッチで必ずボロが出る」と徹底する。東京都予選は2回戦からの5試合をすべて1-0で勝利した。準決勝は延長後半に決勝点。決勝はDFを6人並べて耐え、ラストプレーで1点をもぎとった。ピッチ外で培った粘り強さは一発勝負で生きた。

8年ぶりの高校選手権を前に、川崎FのMF中村からベンチコート30着が贈られた。肩付近に「KENGO」と入った勝負服で、ピッチへ入場する予定。目標は予選の決勝会場だった駒沢陸上競技場でもう1度プレーすること。実現するには、ベスト8をかけた3回戦に進む必要がある。「そういう熱い舞台を生徒と共有できたら」と加藤監督。まずは草津東との1回戦に集中する。【岡崎悠利】