全国高校サッカー選手権が開幕した。冬の風物詩でもある大会が98回目を数える間に、高校生をとりまく環境は変化を続けている。大会期間中、日刊スポーツでは「高校サッカーの現在地」と題して、現状、課題など高校生、ユース年代のサッカーについて、随時連載する。

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高校サッカー選手権が98回を数える間にユース年代の環境も進歩した。今大会に出場した東久留米総合の加藤悠監督(34)は「ユース年代の1年間の試合スケジュールは、とても選手ファーストです」と話す。11年には高体連とJクラブの枠を超えたプレミアリーグが創設された。東久留米総合は同リーグ下部に位置づけられる東京都リーグ1部に所属。1年を通してリーグ戦があり、強化の機会が担保されている。

今年から都リーグはプレミア・プリンス両リーグと同節開催に。上位リーグをよりはっきりと意識できるようになった。加藤監督は育成体制の成熟を感じる一方でこうも言った。「子どもたちは選手である前に、生徒。その観点では“生徒ファースト”ではなくなってきているとは感じます」。

今季から都リーグの最終節は12月8日。教諭でもある加藤監督は「受験のことを考えると、早めに3年生を引退させてあげたいとの気持ちがないと言えばうそになる」と話す。川崎FのMF中村憲剛を輩出した都立の雄だが、選手権出場は8年ぶり。プロを含めサッカーで進路が決まっている選手は一部に限られる。

一方で、プレミアリーグなどの枠組み作りに関わった日本サッカー協会(JFA)の林義規技術委員は「練習はどんなに長くても3時間。残りの時間をどう使うかは選手個々の意識次第」と考える。林氏が監督を務める東京・暁星は通常の練習に加え、週6回の朝練習もこなす。家が遠方で、毎朝4時台の始発電車に乗って登校する選手もいる。それでも東大などの一流大学に合格者を出している。

東京でいえば都リーグは4部まで整備され、56チームが参加。さらにその下には地域リーグがある。プレミアリーグといったトップ層以外が置き去りにならず、加盟チームに試合機会が与えられ、全体の底上げにつながっている。

だが、サッカーで卒業後のキャリアを切り開く選手は一握りである。生徒であり選手である自身をどう律し、両立するか。一方で受験勉強を優先し、早めに引退を決断することも1つの選択肢となりそうだ。【岡崎悠利】