2人の守護神には不思議な縁がある。

帝京長岡GK猪越優惟(ゆうい、3年)と仙台育英GK佐藤文太(3年)。埼スタで行われる準決勝への切符は、無失点に抑えた猪越が手にした。

01年、2人は仙台市に生まれ、同じ会社の社宅で幼児期を過ごした。101号室と103号室。5月生まれの猪越、9月生まれの佐藤。佐藤が生後3カ月で新潟へ転居するまで、2人は親の腕に抱かれながら顔を合わせた。

中学まで新潟で育った佐藤は「環境が良かったし、寮生活を経験したかった」と出生地の仙台育英へ進学。逆に猪越が選んだ高校は、佐藤のいた新潟の帝京長岡だった。仙台と新潟、くしくも互いが入れ替わった。高校選手権では佐藤は1年生から出場。猪越は昨年の2回戦で、旭川実と史上最多の計38人に及ぶPK戦で勝利の立役者になった。

最高学年の今大会、人生はついに交差した。準々決勝で同じピッチに立った。2人とも大会前まで同じ社宅で生まれたことは知らず、開幕直前に両親から聞いた。猪越は「こんなことがあるのかと思いました」と驚きの表情。佐藤も「運命的なものを感じます。しかも再会がこんな大舞台ですから」と実感を込めた。

敗れた佐藤は明大へ進む。試合後は新潟県勢初の4強に進んだ帝京長岡のロッカールームを訪れ、「新潟の誇りを持って、頑張ってほしい」と伝えた。千羽鶴を託された猪越は「文太に『優勝したのが帝京長岡でよかった』と言ってもらえるように頑張りたい」と、言葉に力を込めた。【岡崎悠利】