ヴィッセル神戸のMFアンドレス・イニエスタ主将(35)が公約通り、まずは1冠目をつかんだ。昨季天皇杯王者の神戸が、J1王者横浜に3-3の同点からのPK戦を3-2で制して初出場初優勝を飾った。

Jリーグ公式戦では史上初となる、PK戦で両軍合わせ9人連続失敗という「クレージーな展開」となったが、今季5冠を目標に掲げた元スペイン代表は2得点に絡むなどフル出場。Jリーグの今季開幕を告げる最初の公式戦を制した。

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わずか1カ月半前に天皇杯を掲げた神戸の主将は、今度は新たな優勝杯を手にした。「横浜に難しい試合を余儀なくされたが、いいプレーができた。今年は素晴らしいシーズンになると思う」。ACL、J1、ルヴァン杯、天皇杯の今季5冠獲得を公約していたイニエスタは、最初の公式戦を制し満面の笑みを見せた。

直前のPK戦は主将さえ頭を抱えた。横浜の3人目から神戸を含めて9人連続で失敗した。決めれば優勝という5人目DF大崎、6人目のベルギー代表DFフェルマーレンまで、クロスバーの上を通過させた。7人目のMF山口がケリをつけ、騒然となる場内では歓喜よりは安堵(あんど)の輪が広がった。

PK戦は1人目で成功させていたイニエスタは、取材に応じる前に「ふっー」とひと呼吸して苦笑いした。「自分が決めてホッとしていたが、クレージーな展開になった。PKはどう転ぶか分からない、バクチみたいなもの。横浜も外し続け、うちが好機を手にした。(GK飯倉)大樹もよく止めてくれた」。

直前の円陣では、主将が日本語で「行くぞ」と叫び、仲間の士気を高めていた。この勝利の儀式で昨季のJ1とクラブ初タイトルとなった天皇杯を通じて、年またぎの公式戦6連勝だ。

フィンク監督は「この試合はJリーグのいい宣伝になった。(点の取り合いで)みんなが喜んでくれたはずだ」と収穫を強調する。前線からのハイプレスで一定の成果をつかみ、守護神飯倉や最終ラインは奇跡的な守備を連発させた。J1王者を倒し、次は中3日で最大の目標のACL初戦に臨む。【横田和幸】

▽神戸MF山口(後半24分に一時は勝ち越し点を決め、最後に決着をつけるPKを成功) (イニエスタのパスが起点になり)うまくふかさずゴールを決められた。PKは勝ったとは言えない。結果だけを考えれば3点も取られてはいけない。

▽神戸GK飯倉 古巣横浜にチーム一丸で勝てた。向こうはPK戦で僕と目があってやりにくかったかもしれない。(PK戦は仲間に)早く決めろと思っていた。まだまだ常勝チームではないし、その中で勝つことに意味がある。

▽神戸FWドウグラス(清水から加入し、イニエスタのパスから左足で第1号の先制弾) 彼からのパスでよりうれしい。でも一番大事なのは神戸が勝ったこと。

▽神戸DF酒井 60分以降は(横浜より始動日から数えて)準備期間が短かったことで、あからさまに(課題が)出た。今はタイトルを取る厳しさを学びながら、チームはよくなっている。

◆PK戦の連続失敗 過去のJリーグ主管大会(リーグ戦、カップ戦、プレーオフなどで、天皇杯は除く)において、今回の9連続失敗が最多記録。これまでは93年第1ステージ第15節・横浜F-V川崎の5連続が記録だった。連続ではない失敗は95年第1ステージ第4節・浦和-名古屋の計9回で、今回はタイ記録になる。