ホーム3連敗を喫したガンバ大阪の中で、明るい材料があった。

3バックの右で先発したDF高尾瑠(23)のことだ。今季13試合目の出場で、先発は3試合ぶりだった。

前半27分にMF小野瀬とのパス交換から、最後は高尾が左足で強烈なシュートを放つ。GK正面でゴールこそならなかったが、この一連の動きで約40メートルほどの距離を走りきった。

この試合の特に前半、最終ラインから何度も高尾が駆け上がり、宇佐美、小野瀬らと絡み続けた。見ていて爽快感があり、従来の3バックを守るDFのイメージとは違った。

G大阪の看板3バックは本来、キム・ヨングォン、昌子、三浦の日韓代表級の3人だ。3人とも1対1や空中戦、フィードなどは一級品だが、実際に自ら球を運んで推進力で攻撃参加するタイプではない。

生粋のセンターバックの3人に対し、高尾のような躍動感があるタイプは非常に貴重だ。宮本監督も、誰の、どの特長を優先させるかで頭を悩ませていたが、高尾を選択したのは正解だったと思う。

「自分の持ち味を出そうと思った。(従来の3バックだと)前に球を運べず、つながらなかったので(自分が入ったことで)意識していた」

試合後のオンライン会見に高尾が招かれたことも、周囲の評価、印象がよかった証拠だろう。

湘南ベルマーレに後半30分にダイレクトパスを昌子、三浦の間に通された。三浦がカットすべき位置にいたため、高尾のカバーも遅れて決勝点を献上した。高尾は「やはり(三浦)弦太君が(球に)触ると思っても、あそこで準備できないとだめ」と反省した。

高尾は関学大から昨年入団したプロ2年目。昨季は18試合、今季と合わせてJ1通算31試合となったが、まだ初ゴールは記録していない。今季7月8日の名古屋グランパス戦でも得点場面に遭遇したが、決めきれなかった。それでも、この試合を含めて初ゴールの予感は確実に増えている。

宮本監督は「(高尾)本人にも、そこ(3バック)での(求める)プレーの質は伝えていたので」と、一定の評価を与えた。

次節以降はこの日、休養のためにもベンチを外れていたキム・ヨングォンが復帰してくるはずだし、高尾を含めてどういう布陣にするのか。高尾を、もう1つの定位置である右ウイングバックで使う手もある。

首位川崎フロンターレと勝ち点21差もつけられた8位G大阪。個人技の高い選手が、ソツのないプレーを披露するのもいいが、今季のように逆転優勝は厳しくなり、J2降格もない状況では、失敗を恐れない高尾のようなプレーこそが求められている。最下位(試合前)湘南に敗れても、まだまだ救いを感じている。【横田和幸】