鹿島アントラーズがFW上田綺世(22)の執念のゴールでヴィッセル神戸に追いつき、勝ち点1を手にした。14日に相馬直樹監督(49)が就任して以降、公式戦は2勝1分け。リーグ戦での初の連勝は逃したが、最少失点に抑え、着実に勝ち点を積み重ねた。

神戸戦では前半28分、相手の日本代表FW古橋に得点を許し、相馬体制になって初めて失点を喫した。だが、先制されても慌てず、自分たちの戦いを貫いた。後半19分。上田がMF三竿のパスに抜け出し、体勢を崩しながらも右足でネットを揺らし同点ゴール。実は上田は得点の9分前、ゴール前で味方のクロスボールに合わせようと相手と競り合った際、右手から落下。手を突いた際、腕を痛めたようで以降、右腕が上がらず腕が振れていなかった。もちろん、相馬監督らスタッフも上田の異変に気付いていた。それでも上田はプレーを続行。相馬監督が、交代の準備をしていたところで、チームを救う同点ゴールを決めた。

上田は得点の直後にベンチに退いた。試合後、サポーターへのあいさつも右腕は動かさず、左手を上げて声援に応えていた。けがについては「ここで僕らが話すことはない」と明言を避けたが「FWは、数少ないチャンスを決めることができなくてはいけない。それがうまくできたシーンだった。気持ちで押し込みました」と振り返った。

上田は法大3年の19年夏に鹿島にプロとして加入。プロ入り後、得点した試合は10勝3分けでチームは負け知らずだ。FWの役割を果たしているように思えるが、本人は「1-1を良しとするクラブではない」と厳しく「もう1点取りたかったのもある。前半で先制点を取ることができれば、もしかしたら0で抑えるゲーム運びができたかもしれない。結果的には追いつけましたが、他の方法で勝たせることができたんじゃないかなと思っています」と反省も忘れなかった。

相馬体制となり、守備面では最終ラインから前線までコンパクトにブロックを形成。選手間の距離感も良く、中央も堅く締められ、簡単に相手に中央のスペースを突かれることが少なくなった。攻撃では、サイドからのクロスはもちろん、上田、2列目のMF荒木、土居が背後のスペースに抜け、ゴールに矢印を向けて相手の嫌がる場所を突いている。まさに、攻守で「シンプル・イズ・ザ・ベスト」。やるべきことが整理されているように感じる。

相馬監督は「リーグ戦での連勝を目指して戦ったが残念ながら勝ち点1。そこはちょっと足りなかった」としながらも「選手達が前向きなエネルギーを出したゲームだった。今日、表現できたことが結果につながっていくように、細かいところを詰めていきたい」。1歩ずつ上位を目指していく。【岩田千代巳】