「長友VS酒井」は、浦和レッズDF酒井宏樹(31)に軍配が上がった。

海外でも実現しなかった日本代表両SBの初対決。酒井は前半ロスタイムに、東京DF長友佑都(35)のスライディングを受けながら、移籍後初得点。9年半ぶりのゴールで、チームを公式戦10戦負けなしに導いた。出場したリーグ戦は7戦負けなし。浦和の不敗神話を支える。

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VARの判定は長引いた。1分経っても、笛は鳴らない。酒井は給水を取り、その時を待った。2分後、やっと笛は吹かれた。得点が認められると、水を飲みながら左手を掲げた。横目には、肩を落とす東京DF長友。20-21シーズンは、ともにフランス1部マルセイユで同僚。日本代表でも両SBをけん引する間柄。初めて相手同士で、ピッチに立った。「何か今日は時間が早く感じました」と独特な雰囲気を味わった。

序盤は劣勢だった。試合開始36秒で、背後を取られ、先制点を献上。「完全に自分のミス」から形勢をひっくり返した。前半ロスタイム。オーバーラップで前線に残ると、ペナルティーエリア内の右でパスを受け、ゴール右の角度のないところからGKの股を抜いた。長友のスライディングに動じることもなかった。一度はオフサイドの判定も「ゴールの後、しっかり喜びたかったけど、時間差もありましたが」と笑った。

ともに日本に復帰し、実現した初の対決。過去には08~10年に長友が東京、酒井が10~12年に柏に所属。10年は柏がJ2だったため、両者が顔を合わせることはなかった。海外でも、対決の舞台はなかった。21年6月3日。日本代表-U-24日本代表の「兄弟対決」でマッチアップする可能性はあったが、A代表の長友が先発した一方で、OAでU-24代表に参加していた酒井は不出場。長友に勝利したことを問われると、酒井は「いや」と苦笑いし「(長友)佑都君がいて東京は締まっていた。圧を感じた。圧を掛けられるかは大事」とリスペクトを忘れなかった。

尊敬するSBの前で、柏時代の12年3月11日以来、3485日ぶりのゴール。酒井が出場したリーグ戦は7戦負けなしとした。不敗記録を更新するが「僕1人で何1つ出来ることはない。仲間を信じて、仲間に信じてもらって、続けていくしかない」。浦和の右SBは頼もしい。【栗田尚樹】