子どもたちのあこがれの職業の1つでもあるプロサッカー選手。試合ではピッチで迫力あるプレー見せ、サポーターの心をつかむ。そんな一流選手たちは、どんな1日を過ごしているの? 練習以外の時間はなにをしているの? そんな素朴な疑問を、J1のFC東京の選手たちへぶつけた。「Jリーガーの1日」と題して、選手たちの日常を追った。第3回はDF大森理生(19)。

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DF大森は、社会人1年目らしさが漂うフレッシュな笑顔を見せた。「最近は練習後に(自動車の)教習所に通っています。そうではない日は寮の近くにカフェを見つけたので、そこでゆっくりしたりもします」。

加入してしばらくは、練習をこなすことに必死だった。午前練習の日であれば自主練習とウエートトレーニングを追加し、クラブハウスを出るのは午後3時ごろ。そんな新生活や、大学時代まで苦手だったコーヒー類の味にも徐々に慣れ、カフェでその日の練習の反省や課題の整理をする時間もできた。

コロナ禍でプロキャリアをスタートさせた。以前は「友達とご飯にいくとか、人と会って何かすること、みんなでわいわいするのが楽しかった」。生活は大きく変わった。商業施設なども休業になって外出自粛になった際は「家にずっといるとテンションも下がってしまいがちになるので」と近所を散歩するなどして過ごした。

ただ、どんな状況でも物事を前向きに考えられるのが大森の良さ。散歩ひとつをとっても、これまでは目に入っていなかった道ばたの花がきれいで、すれ違う人との何げないあいさつが気持ちよかった。

「1人になってみて、落ち着いた生活の楽しさ、よさが分かるようになったと思います。むしろ、自分にとって大事な時間の使い方を勉強できるというか。もしかしたら、コロナ禍でなかったら(新生活が)すごく楽しくなってしまって、友達と遊んでいたかもしれないし。必要な時間の使い方を探せます」。

仕事場であるクラブハウスでも、より感覚を研ぎ澄ませて過ごすようになった。クラブは自分にとって会社。1年目で見えていない部分が大半で、先輩と会話すれば初めて知ることばかりだ。「食事などにいけたらもっと勉強になる。そういうところではちょっと影響はあるとは思う」と率直に話しつつも、状況を受け入れ、工夫することの必要性を理解している。「練習を一緒にやっているだけでも勉強になるし、プレー中の確認や、ちょっと雑談混じりの話をきくだけでも勉強になる」。何げない会話をより大切にするようになった。

最近では、ポルトガル語の単語帳をネットで購入した。FWディエゴ・オリヴェイラ、レアンドロらブラジル人選手ともっと会話ができようになりたいと感じたためだという。

「何となく今はテンションや雰囲気でコミュニケーションをとるけど、もうちょっと話せたらおもしろいのではと思っている。いつも笑って話しかけたりしてくれるので」。

会話を大事にするようになったからこその気づきと、1人の時間が増えたからこその勉強。コロナ禍でプロという厳しい社会に飛び込んだルーキーの考え方と取り組みに、学ぶことも多い。【岡崎悠利】

◆大森理生(おおもり・りお)2002年(平14)7月21日、東京都武蔵村山市出身。ポジションはCB。小学生のときから東京の下部組織に在籍。19年シーズンにJ3で21試合に出場。20年にはU-18日本代表に選出。今年からトップ昇格した。好きな海外の選手は元スペイン代表プジョル。好きな食べ物はメロン。183センチ、79キロ。