子どもたちのあこがれの職業の1つでもあるプロサッカー選手。試合ではピッチで迫力あるプレー見せ、サポーターの心をつかむ。そんな一流選手たちは、どんな1日を過ごしているの? 練習以外の時間はなにをしているの? そんな素朴な疑問を、J1のFC東京の選手たちへぶつけた。「Jリーガーの1日」と題して、選手たちの日常を追った。第18回はGK阿部伸行(37)。

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GK阿部は、練習を終えて帰宅するとすっかり2児のパパになる。普段は幼稚園に通う6歳の長女と5歳の長男。コロナ禍で気軽に外出ができない時間が続いたこともあり「かわいそうだし、できるかぎり家にいられるときは一緒に遊ぶようにしている」と話す。

子育てについて「できないことをひたすら正していくのも違うのかなと思う」と感じるものがある。自身の経験からくるものだという。「選手としても、できないことを習得するのに叱られてばかりでうまくいくことはあまりない。自分に関しても、できるように導いてくれるコーチが多かった。育児も、まったく同じではないけど、同じ人と人の関係なので」。最近では子どもたちが自転車に乗る練習を始めた。うまくいかなくてもあえてそのまま帰宅し、家で一緒に反省会をする日もある。

「失敗もさせて、そこでコツをアシストできるのが親の役割かなと」と、自身のサッカーキャリアの中で得た子育て論を語った。一方で「実際はすぐ口出ししちゃうこともあって。自分はコーチには向いていないかも」と笑った。

そんな慌ただしくもある子育てに、「裏テーマ」を作っているという。それは「妻の1人時間をつくること」。たとえば、自転車の練習をするにしても、家の前ではなく、あえて自転車を車に積み込み、離れた公園に行ってたっぷり時間をとる。帰宅まで2~3時間だが「ご飯も作ってくれるし、自分は午前中は練習で時間がとれないので」と、パフォーマンスに影響が出ない範囲でチャレンジしているという。

子どもたちは最近になって、より父親の仕事を分かるようになったという。「おこがましいけど、日本代表戦がテレビで流れると『パパの仕事』と言ってくれたり。『違うけどそうだね』なんて返事をする。スポーツをやっているんだと認識し始めてくれたのはうれしい。できれば試合に出ている自分を子供が見てくれたら。それを実現したい」。かけがえのない家族の存在が、ベテランGKが日々戦う最大のモチベーションになっている。【岡崎悠利】

◆阿部伸行(あべ・のぶゆき)1984年(昭59)4月27日、東京都東大和市出身。ポジションはGK。東京U-18から流通経大を経て07年からFC東京に加入。11年に湘南ベルマーレに移籍後ギラヴァンツ北九州、長野パルセイロと渡り歩き、今季から復帰。好きな食べ物はシャインマスカット。186センチ、81キロ。