清水の元日本代表MF乾貴士(34)が「再起」への1歩を踏み出した。今夏加入した新戦力は鳥栖戦の後半18分から途中出場し、3-3のドローに貢献した。今年6月に規律違反を発端にC大阪を退団。一時は現役引退も覚悟した中で、最下位清水からのオファーに即決した。周囲のサポートを受けて約4カ月ぶりに公式戦復帰。残留へのキーマンはさらなる活躍を誓った。

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乾が清水の一員としてJリーグのピッチに戻ってきた。後半18分、盛大な拍手に迎えられて途中出場。流れを変える切り札は同30分に絶妙なトラップで会場を沸かせた。一時は2点を追う状況となったが、積極的にボールを受けて攻撃をけん引。117日ぶりとなる公式戦出場で2点差を追いつくドロー劇に貢献した。

規律違反を発端に6月9日付でC大阪を退団。一時は「引退も覚悟した」。その後はJ2岡山で約1カ月間、練習参加。当時は無所属選手だった。それでも、岡山の好意で練習試合3試合に出場。「岡山のおかげで今日ここに立てた」。

移籍先を模索している中で周囲のサポートも支えになった。乾は「本当にいろんな人に助けてもらった」。その1人が元日本代表監督の岡田武史氏(65)だ。受け取ったメッセージは「現役を続けてほしい」。自身が09年に日本代表デビューを飾った当時の監督の言葉で奮い立った。

J1クラブでは唯一だったという清水からのオファーに即決。「助けてもらったから、清水を助けたいと思った」。チーム最年長選手として加入。自身の経験を還元することも役目の1つと捉えて行動してきた。

自身にとっても再出発となる一戦は引き分けに終わった。ただ、試合後は晴れやかだった。清水入りに賛否あることは分かっているが、「サッカーができて楽しい」と素直な気持ちを明かした。チームは最下位と苦しい状況。「残留できるように助けたい」。その思いと感謝の気持ちを胸に、残り11試合に全てをささげる。【神谷亮磨】

◆乾の規律違反 C大阪在籍時の4月5日の柏戦の後半途中に交代する際、スタッフに暴言を吐き、試合後も同様の行為をした。クラブは6日から乾に当面の謹慎処分を科したことを公表。練習場への立ち入りを禁止。同14日にクラブはチームの規律、秩序を乱す行動が確認されたなどとし、公式戦6試合の出場停止を発表。処分明けの5月16日以降もチームに合流せず、クラブと話し合いを行ったが、6月9日に、クラブから双方合意の下として契約解除が発表された。