日本サッカー協会は10日、都内のサッカーミュージアムで日本サッカー殿堂入りした元日本代表の木村和司氏(64)ら5人の掲額式典を行った。ほかは元日本代表監督の故イビチャ・オシムさんや長崎・国見高の元監督の故小嶺忠敏さん、南米サッカー界とのパイプをつくった故北山朝徳さん、静岡県で普及、強化に尽力した女性指導者の草分けの綾部美知枝さん(73)。式典では本人や親族に記念プレートが贈呈された。

   ◇   ◇   ◇

日本サッカーの発展に尽力した個人、団体を表彰する「サッカー殿堂」。05年に創設されて昨年まで82人と2チームが殿堂入りしたが、すべて男性だった。綾部さんは女性として初めて掲額だったが「男性とか女性とか関係なく、やってきたことが評価されたのがうれしい」と笑った。

清水市内(当時)の小学校教員時代に指導を始め、清水FC監督として活躍。日本代表、Jリーガー、指導者ら多くの人材をサッカー界に送り出した。女性指導者のパイオニアであるとともに、父親や母親のチームも組織するなど年代性別を問わず普及に尽力。日本協会でも理事、特任理事として女子や少年の大会整備などに大きく貢献した。

高校もJクラブも、かつて故堀田哲爾氏と綾部さんが育てあげた「サッカー王国」に陰りが見える。「全国のレベルが上がったからですよ。優秀な指導者が日本中で育ったのはいいことだから」と笑顔を見せる一方で「でも、それでも清水は強くないと。もっと強くなるように頑張らないといけないわね」。サッカーに本格的に取り組むようになって半世紀あまり、「王国の母」の情熱は、少しも衰えていない。【荻島弘一】