<高校サッカー:京都橘0(3PK1)0国学院久我山>◇3回戦◇3日◇駒沢

 前回4強の京都橘(京都)がPK戦で国学院久我山(東京A)を下した。

 0-0で迎えたPK戦直前。京都橘のGK矢田貝(やたがい)壮貴(1年)は臆するどころか待ちかねたように、ベンチ前から飛び出した。チームの円陣に加わるのも忘れていた。「呼びとめられて気づきました。急ぎすぎてましたね(笑い)」。1年生とは思えないどっしりとした構えで、相手1人目のミスを誘うと、3、4人目と続けて止めて勝負を決めた。

 「とにかく1本は止めようと。4人目のシュートは、ポストに当たった後にゴールに向かって転がったので、少し焦りましたけど」と笑ってみせた。3人目までは事前のデータで矢田貝を助けたが、最後は自分の感覚で止めた。守備の柱DFハウザー・ケン(3年)も「なぜあんなに肝が据わっているのか。持っているとしかいいようがない」とたたえた。

 前々回準優勝、前回ベスト4と2大会連続で国立に進出した強豪校で、182センチの矢田貝は入学直後から正守護神を任された。最初は遠慮があったが、ハウザーから「いいからタメ語で来い。それがチームのため」と言われて吹っ切れた。この日も“ホーム”国学院久我山の大声援に負けじと、ピッチに怒声を響かせ、守備陣を統率した。最後まで無失点で2戦連続の完封だ。

 米沢監督は「声を出してチームを引っ張る力を秘めていることは、入学前から分かっていた」と期待通りの成長を喜んだ。矢田貝は「声を出すこと。それだけは、先輩たちにも負けてません」と胸を張る。日本代表GK川島に憧れる理由も「コーチングに、迫力があるから」。悲願の初優勝を狙うチームを、最後方から大声で盛り立てる。【塩畑大輔】