アルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(35=パリ・サンジェルマン)が、節目の公式戦1000試合目で偉大な先輩を超えた。オーストラリア戦で今大会3点目となる先制ゴール。W杯通算得点数を「9」とし、8点で並んでいた「神の子」ディエゴ・マラドーナ(1960~2020年没)を上回った。チームは2-1で勝利し、2大会ぶりの8強入り。メッシは唯一、手に入れていないW杯優勝へ向け、いよいよ状態を上げてきた。

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これまで数え切れないほど見た、メッシらしい先制ゴールだった。前半35分、自らが蹴ったFKの流れから右サイドでボールを受けると、中央のMFマカリテルへパス。少年時代から基本とするパスアンドゴーを忠実に実践し、相手選手が待ち構えるペナルティーエリアへと走り込んだ。

マカリテルはボックス内に残っていたDFオタメンディへ縦パス。これをワンタッチで落とし、ボールを受けたメッシは目の前の4人にひるむことなく左足を振った。1人の股間を抜けたグラウンダーのシュートがゴール左へ突き刺さった。

W杯通算9点目。並んでいたマラドーナ、ギジェルモ・スタービレを抜き、アルゼンチン代表での単独2位に浮上した(1位はバティストゥータ氏の10得点)。これまでの8点はすべて1次リーグで決めたものだったが、決勝トーナメントでの価値ある1号。キャリア通算1000試合目でのタイムリーな活躍に「この素晴らしい瞬間を多くの人と共有できて幸せだ」と笑顔を見せた。

マンチェスター・シティーで活躍する“新星”アルバレスにもゴールが生まれ、2-1の逃げ切り勝ち。メッシは準優勝した14年ブラジル大会以来、2大会ぶりの8強入りに「大変な試合で、フィジカル面でもきつかった。それでもこの勝利でまた前へ進める。素晴らしい1勝だ。我々はまだまだこの大会にとどまりたい」と意気込んだ。

9日(日本時間10日午前4時)の準々決勝では、強敵オランダと戦う。86年W杯メキシコ大会を制しているマラドーナと常に比較されてきたメッシが、唯一手に入れていないのがW杯のタイトル。5度目の今回は「最後のW杯」とも公言するだけに、負けるわけにはいかない。

メッシが1000試合で積み上げてきたゴール数は789点にも及ぶ。同世代で競い合ってきたもう1人のスーパースター、ポルトガル代表FWロナウドでも1000試合で725点。マラドーナの系譜を受け継ぐ希代の天才レフティーは、その得点力を武器に最も欲しいタイトルへ向けて突き進む。