今大会最大の番狂わせが起きた。人口33万人のアイスランドが2-1で“サッカーの母国”イングランドに逆転勝ちした。開始4分で先制を許したが、その2分後にR・シグルドソン(クラスノダール)が同点ゴール。前半18分にシグソルソン(ナント)が勝ち越し弾を決め、粘り強い守りで逃げ切った。

 アイスランドが後世まで語り継がれる偉業を成し遂げた。終了の笛が鳴ると選手全員が拳を振り回しながら、青色で埋まるスタンドへ駆けだした。サポーターと喜びを分かち合う「勝利の儀式」の始まりだ。全員が両手を高く掲げ、手拍子をたたきながら「ウォウ、ウォウ」とうなる独特の儀式。歓喜の渦の中でピッチとスタンドが完全に一体化した。

 ハルグリムソン共同監督が「相手はそれほど我々にプレッシャーをかけてこなかった」と話したように、イングランドに名前負けしなかった。開始4分でPKを決められたが、2分後にロングスローを頭でつなぎ、R・シグルドソンが右足で同点ゴール。同18分にはサイドチェンジで揺さぶってからゴール前で細かくつなぎ、最後はシグソルソンが右足で勝ち越し点を挙げた。あとは実直なお国柄どおり、ひたすら体をぶつけて激しく守り抜いた。

 ハルグリムソン共同監督は「素晴らしい。これから先、ずっと語り継がれるだろう」と興奮を隠せなかった。女子や子供を含めても同国協会に登録されているサッカー選手はわずか2万3000人(イングランドは約150万人)。うちプロ選手は100人しかおらず、国内リーグにもプロチームはない。そんな小国が、イングランドの誇りを切り裂く痛快な逆転勝ち。指揮官は「この勝利でチームは自信を深めた。この日のようにきちんと準備して戦えば、どんな相手でも勝てる」と、次の開催国フランス戦に自信を深めた。