ポルトガルのエース、クリスティアノ・ロナルド(31=Rマドリード)が決勝の舞台へ舞い戻った。ポルトガルは準決勝で初出場のウェールズを2-0で撃破し、地元開催で準優勝に終わった04年以来、3大会ぶり2度目の決勝に進んだ。ロナルドは後半5分に先制点を決めて大会通算最多9得点のプラティニ(フランス)に並んだ。12年前の悔しい記憶を消し去るため、必勝態勢で10日(日本時間11日未明)の決勝に臨む。

 抜群の高さだった。後半5分。ゴール前のロナルドが、こん身のジャンプで左クロスに合わせた。マークについた相手の上からたたき込む豪快なヘディングシュートがゴール右上へ突き刺さった。先制点で欧州選手権通算9点目。あの「将軍」プラティニとともに歴代最多得点に並んだ。

 3分後にはアシスト。ペナルティーエリアのすぐ外で相手のクリアボールを拾うと右足シュート。これをFWの相棒ナニがゴール前でスライディングしながら右足で方向を変えてゴールした。Rマドリードのチームメート、ウェールズFWベールが「クリスティアノ(ロナルド)は生粋のFW。今日もまた決めた」と脱帽する活躍で、チームを04年ポルトガル大会以来となる決勝の舞台へ導いた。

 ロナルドが欧州選手権に初出場した04年大会の決勝でポルトガルは伏兵ギリシャに0-1で敗れた。当時、人目もはばからずに号泣したロナルドは「ギリシャに敗れた決勝のトラウマを払拭(ふっしょく)したい。勝ちたいよ。本当に優勝できるチャンス」と、初優勝に向け力説した。

 ロナルドが通算得点で並んだプラティニは84年フランス大会だけで9点を挙げ、得点王としてフランスを優勝へ導いた。ロナルドは4大会でプレーしているとはいえ準優勝が最高成績。今大会で優勝して初めて、名実ともにプラティニに並ぶことができる。

 ポルトガルのサントス監督は「次は決勝戦だ。きれいにプレーすることが目的ではない。勝つことが目標だ」という。90分以内で勝ったのは今大会初めて。1次リーグを3戦3分けで何とか勝ち抜き、決勝トーナメントでも泥くさく延長戦やPK戦を制してきた。「自分たちを信じてずっとやってきた。幸運な最後が待っていることを祈るよ」とロナルド。自身のゴールで物語をハッピーエンドで終わらせるつもりだ。【中野吉之伴通信員】