<アジア大会:テニス>◇第12日◇9月30日◇韓国・仁川

 テニスの男子シングルス決勝で、第5シードの西岡良仁(19=ヨネックス)が第1シードの盧彦勲(31=台湾)に6-2、6-2でストレート勝ち。世界ランク168位のプロ1年目が、同42位の格上から金星を挙げた。この種目の優勝は74年テヘラン大会の坂井利郎以来40年ぶり。錦織と同じ米IMGアカデミー出身の「錦織2世」が、まずはアジアの頂点に立った。

 アジアの舞台では「錦織2世」西岡が大番狂わせを起こした。第2セット第8ゲーム。0-40から猛烈に追い上げ、3度のジュースの末のアドバンテージ。盧のリターンに対し、両手のフォアハンドで対角コースを射抜く。その軌道を見て盧は諦めた。勝った。ラケットを放り投げ、背中を反らせて喜ぶ。「うれしい以外の言葉が出てこない」。3日前、19歳になったばかり。にきびが残る顔で、表彰式で金メダルを掲げた。

 電光石火の立ち上がりだった。第1セット第1ゲームをブレークすると、一気に5ゲームを連取。第2セットも1-2から5ゲーム続けて取り「すべて相手が上。いつ返されるか分からないので攻め続けたけど、こんなにうまくいくとは…」。ブレーク率は66%対28%と格上を1時間10分で圧倒した。9月23日の団体戦で銅メダルを獲得。個人では40年ぶりの金メダルだ。

 錦織と同じ米IMGアカデミー出身。15歳で「盛田正明テニス・ファンド」の支援を受けて留学した。同ファンドからのプロ転向は錦織と西岡の2人だけ。今年1月にデビューし、8月の全米オープンでは日本男子2人目の10代での4大大会の本戦出場を果たした。

 小柄な171センチだが、気は強い。昨年10月、練習がうまくいかずラケットを投げて大暴れし、山中夏雄コーチ(41)に試合をキャンセルされた。守備は粘り強い。「子供のころからアウトになる球でも返していたので自然と」。ライン際の球をことごとく返してリズムをつかむと「相手がミスしてくれた」。運動神経も抜群で、米留学時代の人生初ゴルフのスコアは「時間がなくて8ホールだったけど37でした」。驚異の“ハーフ”1オーバーだった。

 現在は東京のナショナルトレーニングセンターを拠点に活動する。「『2世』と比べてもらってますが、錦織さんは別格。少しでも近づけたら」。あこがれの先輩を追う先に、夢の4大大会制覇と24歳で迎える東京五輪がある。【木下淳】<西岡良仁(にしおか・よしひと)アラカルト>

 ◆生まれ

 1995年(平7)9月27日、三重県津市。

 ◆テニス歴

 4歳から始め、07年の全国小学生大会で優勝。中学3年で米フロリダ州に留学。12年の全米オープンジュニアで単複4強。昨年11月の全日本選手権で決勝進出、伊藤竜馬に敗れて準優勝だった。同年のツアー下部大会で一般国際大会シングルス初優勝。

 ◆世界ランク

 今年1月のプロ転向時は378位だったが、9月8日付で自己最高の167位に。最新の同29日付で168位に下げた。目標は「今年中に150位以内」。ジュニア時代の世界最高ランクは12位。

 ◆趣味

 アイドルグループ乃木坂46の大ファン。

 ◆錦織とメル友

 8月の全米オープンは初戦で棄権したが、錦織は準優勝。その時、下部ツアーで上海にいて「おめでとうございます」とメールすると逆に「(下部ツアー)優勝おめでとう」と返信をもらった。

 ◆利き手、サイズ

 左利き。171センチ、63キロ。